一杯たったの280円で腹と心を満たしてくれる「牛丼」は日本が誇る国民的ファストフードだ。全国の年間消費量は実に10億食とも言われる。知っているようで知らない牛丼の秘密に迫った。
「吉野家」「すき家」「松屋」の牛丼大手3社には由縁がある。すき家を運営する「ゼンショーホールディングス」CEOの小川賢太郎氏は吉野家の元社員。「松屋フーズ」会長の瓦葺利夫氏は中華料理店経営時代に吉野家本部にヘッドハンティングされた経歴を持つ。松屋1号店開店当時(1968年)は吉野家と同じ仕入れ先から食材を調達していたという。
現在、3社が提供する牛丼(松屋は牛めし)並盛価格は横並びの280円。各社とも原価ぎりぎりで限界に近いサービス競争を展開していることがわかる。『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)著者で経営評論家の坂口孝則氏が語る。
「チェーンによって違いはありますが、牛丼一杯にかかるおおよその食材コストは牛肉80g=80円、玉ねぎ10~20g=5.4円、タレ30g=30円、ご飯250g=40円程度と考えられます。これにお茶・紅ショウガ・紙ナプキンなどの諸経費20円を加えると、一杯あたりの原価は175.4円となる。さらに人件費や家賃、光熱費などのコストを加えると、牛丼一杯あたりの儲けは10円以下という試算になります」
近ごろは、各社ともサイドメニューで稼ぐ形態にシフト。原価が10~20円で利益率が高いジュースなどで利益を確保しているという。
※SAPIO2013年11月号