最近の若者は内向きだとよく言われる。自分の身の回りのことにしか興味がなく、未知の世界へ挑戦しないというのだ。40年前に世界の強豪と戦い、「世界のアオキ」と呼ばれるまでになった青木功氏(71歳)がかつての自分を振り返りながら、今の日本の若者をどう見えているのかを語る。
──2020年の東京五輪でもゴルフ競技がある。ジュニア世代に期待が高まっている。
青木:ジュニアは常に親がそばについています。ゴルフスクールでは親が後方で子供の一挙手一投足を見守り、競技会では子供がティーショットを打ったあと、ボールの行方より親の顔色を気にする。これでは子供は自立できません。本気で子供を上達させようと思うなら、自立心を持たせなければいけない。これはゴルフに限ったことではありません。
──過保護は勝負での「甘さ」にもつながる。
青木:なぜか今の選手は負けても悔しがりません。最終日にトップでスタートしながら、逆転負けした試合で「楽しめました」などというコメントが象徴しています。楽しめましたって? ふざけるなよと言いたいですね。私は負けず嫌いだから、ジャンボがプロデビュー(1970年)して勝ち続けた時、顔を見るのも嫌な時期がありました。
ジャンボと中嶋常幸と3人でラウンドして負けた時、祝福の握手で痛いほど握り返してやったこともあります。私なりの悔しさの表現でした。プロならそれぐらいの負けん気が必要だと思います。
ジャンボがライバルとして出てきてくれてよかったと思うのは、自分のゴルフの長所も短所も分かったことです。球が飛んで曲がらないジャンボに勝つために、私はアプローチとパターを徹底的に磨こうと思いました。ゴルフ場の夜警の人に「寝られないから早く帰ってくれ」と怒られるほど練習しました。それでレベルアップして世界で戦うことができた。ライバル出現はピンチであると同時に、自分を高める最大のチャンスでもあります。
──「グローバル化」が叫ばれて久しい。海外で戦う日本の若者に何を伝えたいか。
青木:ゴルフに限らず、海外に行くなら明確な目的を持って行くことが大事です。「とにかく外国に行ってみたい」といった海外志向だけなら止めた方がいい。「米国に3年間留学していました」とキャリアをアピールする人がいますが、3年間留学したから何なの? と言われて答えられなければおしまいです。目的を持って海外へ行くなら素晴らしいと思いますが、箔をつけるだけなら意味がありません。
私は世界の強豪とゴルフがしたくて海を渡りました。若い人も「絶対これをやるぞ!」といった目的意識を持ってほしい。チャンスを作るのは自分であり、そこで何をするのかを決めるのも自分です。
そして与えられた時間を目一杯頑張ることです。私が海外で予選落ちを続けても「なにくそ」と再挑戦し続けたように、若い人も結果が出なくても諦めず何度でもチャレンジすればいい。挑戦し続ける人の中から、やがて日本を背負って立つ人材が出てくることを期待しています。
※SAPIO2013年11月号