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食品偽装 「それっぽい」部分を切り出すカルビはルール無用

 次々と明らかになるホテルの「食品偽装」。しかし問われているのは消費者の意識でもある。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が説く。

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 「案の定」と思っている関係者も多いだろう。名門とされたホテルや旅館で次々にあらわになる「食品偽装」の話である。

 外食業界における食品表示は基準があいまいだ。だからこそ、時折裏でごまかしが行われてきた。過去、飲食店に刑事罰が科された例では、牛肉のみそ漬けなどの産地偽装に対して、不正競争防止法が適用された例がある。しかしこれは包装された製品であり、飲食店で提供されるメニューではなかった。飲食店のメニューが、景品表示法で引っかかるとすれば、提供するものを著しく優良だと誤認させてはならないとする「優良誤認」だが、直接の罰則規定はなく、ある意味「バレなければやりたい放題」と言える環境でもある。

 メニューに対して、どこまで正確さを求めるかは難しい。例えば代用魚だ。2003年頃までは分類や和名が「ムツ」ではない「メロ」(マジェランアイナメ)を「銀ムツ」として売っていた。現在では「銀ムツ(メロ)」という表示は許されているが、飲食店でここまで徹底した表記を見ることはまずない。客の側にしても「メロ」と書かれても、何が出てくるかわからない。

 今回のような騒動が起きると必ず「規制強化を」という声が大きくなる。だが事業者が「善」であり、なじみの小料理のように店と客に信頼関係があれば、本来ルールなどなくてもいいはずだ。

 例えば焼肉店だ。「タン」「ハラミ」など、明らかに部位の名称=メニュー名となっている部位はともかく、部位として存在しない「カルビ」などはまさにルール無用。ナカバラや肩バラ、トモバラ、肩ロースなどの部位から、店が「このあたりがカルビっぽい」と思える部分を切り出し「☓☓カルビ」として提供している。焼肉は部位とメニュー名の組み合わせが無限にある。そうした引き出しの多さも、また人をひきつける魅力のうちであり、焼肉という食文化の奥深さや神秘性にもつながる構成要素でもある。

 いっぽうホテルのレストランではどうか。例えば、牛ならば高級部位の「フィレ」に似た特徴を持つ部位に、価格が半分ほどの「シンシン」がある。やわらかく、肉の味がしっかりしたフィレにも似た特徴を持つ部位だ。だがシンシンをフィレとして提供すれば、偽装になる。メニュー構成やコンセプトをおろそかにしたまま、ブランドに頼りきる。シンシンのようにまだ消費者になじみの薄い肉の旨さを喧伝することなく、代用扱いする。例え話だが、そうした姿勢や風潮が今回のような騒動につながっている。

 ただし、そうした「ブランド」を求めたのは消費者でもある。この数日、全国のホテルで「ステーキ」として、牛脂を注入した成型肉を提供していた事例が次々に発覚した。まっとうな塊肉と異なり、0-157などの感染リスクもあり、成型肉は、レアやミディアム・レアで提供してはならない。提供側は「ブランド」にゲタをはかせたつもりかもしれないが、結果として客の健康や安全を危険にさらしていたことになる。飲食店での食品表示にルールという縛りがかけられてしまったら、日本の食文化からひとつ深みが奪われることになる。「和食」の世界遺産登録はもう目の前。ブランドに飛びつく食べ手の意識が変われば、店の意識も変わると信じたい。

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