“じぇじぇじぇ”などの流行語や熱狂的なファンを生み、社会現象にまでなった『あまちゃん』の後釜だけに注目度も高かったNHK連続テレビ小説『ごちそうさん』だが、初回視聴率22%、最高で27.3%(10月16日)を記録するなど、快進撃を続けている。
「『あまちゃん』は、これまでの朝ドラで最もバカバカしく見えて、実は東日本大震災という現実に挑んだ勇気ある作品でした。しかも北三陸の観光客を増やし、復興に貢献するという実効性もありました。ドラマが現実を変えたんです」
と語る“あまラー”のコラムニスト・町山智浩さん。『ごちそうさん』は、対照的に朝ドラの原点に戻ったと話す。
「時代設定が大正・昭和なので、テンポが速い『あまちゃん』についていけなかった60代以上のもともとの“朝ドラファン”も取り戻したのだと思います。
物語は、明るい大正デモクラシーの時代をまもなく終え、関東大震災が起こるでしょう。さらに日本は戦争に向かい、食べ物がない時代、贅沢が罪の時代になっていきます。そこでめ以子がどう闘っていくかが見どころですね」
ヒロインの苦悩や葛藤も丹念に描き出すのが朝ドラ。映画、ドラマライターの清水久美子さんも、これにうなずく。
「困難な時代を舞台に、ヒロインの子供から大人までの半生を描く“おんな一代記”が朝ドラの王道です。アキ(能年玲奈・20才)を中心に母娘3代の人生を追った『あまちゃん』と違い、『ごちそうさん』はひとりの女性をじっくり描いている。また、役柄も明快。杏さんの役どころは、とにかく“食べまくる”女性。おいしそうにモリモリ食べる姿を見ると、ほのぼのとした気持ちになるし、なにより元気が湧いてきますよね」
このヒロインへの“親近感”が魅力だと話すのは、生粋の“あまラー”で、「朝の楽しみを失った」とまで語る上智大学の碓井広義教授(メディア論)。
「食べることに関しては飛び抜けているけれど、それ以外は『ヒロインになれるの?』と思ってしまうくらい普通の女性。どこにでもいそうだからこそ、視聴者は親近感を覚え、構えずに見ることができるんでしょう」
オープニングテーマは、ゆずの歌う『雨のち晴レルヤ』。こちらもゆったりとした3拍子のリズムで、アップテンポだった『あまちゃん』とは違った王道の魅力。まさに「ホッとできる朝ドラ」(清水さん)なのだ。
※女性セブン2013年11月14日号