厚生労働省の発表によると、「特別養護老人ホーム(以下、特養)」には全国で約42・1万人もの入所申し込み者がいるという(2009年)。特養は原則として症状が重く、手厚い看護が必要な人のための低額の施設だが、介護保険の給付費がかさんでいることもあり、厚労省は2015年度からは要介護2以下の新たな入所者を認めないという入所基準改革案も提示している。
狭き門となった特養入所だが、中にはそれほど待機せずに入所できたという人も。もちろんタイミングや状況にもよるが、参考にできることもあるはず。作家の本岡類さん、によるポイント解説もチェック。
定員30人以上の広域型特養は、入所者の居住地に関係なく申し込み・入所することができる。しかし、施設不足に悩む都会の場合、地域以外の住民は受け入れないという所も。
「母の友人が隣の市の特養に入所。面会に行ったら職員の対応もよく友人もイキイキしていたので、母も私もとても気に入りました。
そこでも市内の居住者のほうが有利だという話を聞き、母は介護がまだ不要でしたが、将来を見据えて隣の市に引っ越し。5年後、実際に入所が必要になったとき、母は申し込みから数か月で念願の特養に入れました」と、辻由美子さん(仮名、65才)。
NPO法人「特養ホームを良くする市民の会」理事長の本間郁子さんはこう語る。
「市の福祉担当者としては、市民からの要望に応えるためにも市内の人を入所させたいところ。市民用のベッド確保に躍起になっている市もあります」
要介護4の清水裕子さん(仮名、92才)は、息子夫婦と同居しながら在宅介護を受けていたが、2年前から認知症の症状が進んだ。そこで、県内の地元特養に申し込んだところ、数か月で入所が決まった。
清水さんの息子は、「日ごろから、その特養のデイサービスなど短期の介護サービスを利用し、相談に乗ってもらっていたことがよかったと思います」と話す。
特養の入所順は、通常、要介護度の高さや独居かどうかなどの条件を点数化して決められるが、それ以外の要素も関係すると作家の本岡類さん。
「これだけの待機者数なので、点数は同じという場合も多いからです。その場合、顔見知りかどうかということは意外に大きい。知っている人とまったく知らない人がいた場合、目の前にいる困っている人を推薦したくなるのが人情でしょう。どんな介護が必要かもわかっているわけですから」(本岡さん)
※女性セブン2013年11月14日号