【書評】『美人の正体 外見的魅力をめぐる心理学』/越智啓太著/実務教育出版/1470円(税込)
人間の外見の魅力を巡る様々なテーマについて、おもに欧米における最新の研究成果に基づき、心理学の立場から考察したのが本書だ。
たとえば〈美人は性格が良いのか悪いのか〉〈美人は頭が良いのか悪いのか〉。いずれも経験的にも議論の分かれる問いだが、本書によれば、美人(とハンサム。以下同)は性格が良いと「思われる」という実験結果が出ているだけでなく、百数十本の論文の多くも美人は実際に性格が良いと結論づけている。同様に、万単位の子供を対象にした欧米の複数の調査でも、美人ほど知能が高いという結果が出ている。
いずれの場合も、人間は期待通りの成果を出す傾向があるという「ピグマリオン効果」により、「性格が良い」「頭が良い」と期待される美人は実際にそのように育ちやすいことが原因の一つだろう、と著者は分析する。
本書は身体的魅力についても取り上げ、男性が「ウエストのくびれ」と「バストの大きさ」を女性の身体的魅力と感じる理由を種の保存という観点から説明する。その2つはいずれも妊娠しやすさや育児能力の高さのシグナルであり、進化の過程で自分の遺伝子を残したい男性がその2つを魅力として感じる傾向が形成されたのではないか、という。
本書が紹介する最新の研究成果が証明することは、ひと言で言えば、「人間、見た目がすべて」。ミもフタもないが、本書も最後の章で言及するように、美人として生きることは決して楽ではなく、美人でなくても恋愛を楽しみ、幸福な人生を送ることができる。それが現実の面白さであり、悩ましさでもある。本書はそのことも思い知らせてくれる。
※SAPIO2013年11月号