中国では石炭を使った暖房の供給が始まる冬、微小粒子状物質「PM2.5」の濃度が高まることが知られている。特に、今シーズンは測定器が上限値を振り切り、「爆表」と呼ばれる測定不能の状態に陥るなど、とにかく凄いことになっている。
そんな中、既に一部の富裕層は“霧の都”北京から脱出を始めている。
行き先のひとつは、中国の最南端にある海南島。真冬でも海水浴を楽しめることから「中国のハワイ」と呼ばれる一大リゾートだ。昨冬も大気汚染を尻目に、巨大ホテルやコンドミニアムは北京からの家族連れで溢れ、道路は渋滞するなど“PM2.5特需”に沸いた。中には、小型プライベートジェットで島に降り立ち、「天体浴場」と呼ばれるヌーディストビーチで日光浴を満喫する人もいる。
今冬は中国全土で大気汚染が深刻なことから、海外のリゾート地に行き先を変更する富裕層もいる。彼らの北京脱出に対し、庶民から「見殺しにするのか」という怒りの声が上がっているのだ。北京大学などの調査では、昨年1年間で、北京、上海など4大都市でPM2.5が原因と見られる死者が8572人に達しているという。
冬から春にかけては、日本への飛来も増える。大分県立看護科学大学教授(生体反応学)の市瀬孝道氏が警鐘を鳴らす。
「因果関係はわかっていませんが、濃度が高い時は福岡での救急搬送が増えるそうです。長期的には、日本でもがんや心筋梗塞のリスクが高まるなどの影響があるかもしれません」
※週刊ポスト2013年11月22日号