【書評】『なぜ、結婚はうまくいかないのか?』森川友義著/ディスカバー携書/1050円
【評者】愛知学院大学教授(流通論)青木均
既婚者が思わず目を見開くタイトル。既婚の私は、店員さんの視線を避けながらすぐさま買い込み、部屋にこもり一気に読んでしまいました。
本書の構成は、なぜ結婚生活はうまくいかないのか、その理由を探り、それでも人々が離婚をしない理由を考察し、それらを前提として、結婚生活の改善策を示すというものです。離婚は取り上げても、その指南ではなく、あくまで結婚生活の改善がテーマです。ただし、「ちゃんと現実を見ろ!」と問いかけているわけです。読み終えて、感心して、いくつかうなった点がありました。
1つ目。結婚がうまくいかない理由の1つが、恋愛して結婚するからであるという点。恋愛至上主義ともいえる現在に、このパラドクシカルな指摘。恋愛感情というものは、続いてせいぜい2年程度、しかし、長生きの私たちは数十年間結婚生活を継続しようとする。うまくいかないのは当然じゃないかというのです。
2つ目。離婚しない理由の1つが、サンクコストを考えて、損切りできないからであるという点。サンクコストというのは経済学用語で、活動をやめてしまうと無駄になってしまう、それまでかけた努力や費用のことを指します。嫌な相手でも、これまでの苦労を思えば、なかなか離婚できない。結局、苦労が苦労を背負い込むというのです。
3つ目。結婚生活改善策として、相手の評価を減点法から加点法に変えるという点。幻滅しないために、結婚には期待するなといいます。そして、相手が何かしてくれたら、小さなことでもプラスの評価をする、そうすると長続きするというのです。
最後の章で、生活が飽きない工夫、けんかの後の仲直りの方法、共通の外敵を見つけることなど、さまざまな結婚生活の改善策があげられています。最初読んだときは、少しがっかりしました。一見ありきたりなことばかりだからです。しかし、もう一度読み直し、感じ入りました。日常的に、当たり前のことがきちんとできているのか、本書が問いかけていると思い至ったのです。
本書を妻に読ませようかどうか今悩んでいます。良い結婚生活のために大事な共通認識を持ちたいのですが、やぶへびになる気がしているのです…。
※女性セブン2013年11月21日号