10月5日に放送されたNHKスペシャル「ドキュメント消費増税 安倍政権 2か月の攻防」では、NHKのカメラが、初めて総理大臣執務室に入るなど安倍晋三首相に密着し、その決断の様子を伝えた。局内からは、「これでは政権の広報機関ではないか」との声もあがったという。
さらに10月25日、安倍政権が国会に提示したNHKの経営委員人事案は、安倍氏と対談したばかりの作家・百田尚樹氏、安倍応援団の代表格である保守派の評論家・長谷川三千子氏、そして安倍氏の元家庭教師だった日本たばこ産業(JT)顧問という首相に近しいメンバーで、NHKに対する安倍支配が始まったという悲鳴も聞こえてくる。
安倍自民党にとってNHK掌握は悲願だった。実はNHKについては、政権交代以前から自民党の部会レベルで議題に上がっており、自民党の鬼木誠・衆院議員は今年4月の国会質問で、「NHKさんの今の問題点は、まず第一点がいや応なく国民から徴収された受信料をもとに、そして第二点、日本をおとしめる番組が作られ、そして第三点、その内容が公共にオーソライズされ、そして第四点、国内外に放送される」と痛烈なNHK批判を展開している。
「“第一次政権はメディアの偏向報道に潰された”という思いの強い安倍氏にとって、メディア支配は政権を安定化させる絶対条件。とくにNHKは朝日新聞と並ぶ最大の天敵でした。朝日は、安倍氏が自民党総裁に就任してすぐに社長が会談を求めて“和解”して以来、安倍批判を封印している状態で、他メディアも安倍ヨイショばかりなのは見ての通り。
安倍氏としては、『NHKを抱き込めばメディア支配が完成する』という思いで、NHK改革に狙いを定めているんです」(政治ジャーナリスト・武冨薫氏)
来年1月のNHK会長人事の先にやってくるのは、公共放送から「広報機関」に姿を変えたNHKの姿かもしれない。
※週刊ポスト2013年11月22日号