国内

東電原発の内部告発連発 作業員「ハッピー」官僚「若杉」ら

 東京電力福島第一原発で事故収束に携わっている現場作業員「ハッピー」さんが本を出した。題して『福島第一原発収束作業日記~3.11からの700日間』(河出書房新社刊)。本の帯で津田大介さんが「どんな報道関係者にも真似できないルポルタージュであり、新世代の労働者文学でもある」と書いている。

 一読して、まったくその通りだと思った。一言付け加えれば、これは現場作業員が見た「生の事故報告書」でもある。まるで原発からの「モクモク」(放射能を含んだ霧と煙)が見えるようだ。

 ハッピーさんといえば、事故直後からツイッターで原発内部の様子を報告してきた。記者たちが近寄れない中で、そのつぶやきは、ときに「特ダネ」にもなった。

 たとえば、2011年12月17日付では汚染水処理や循環冷却のホースに植物のチガヤが穴を開けてしまい、汚染水が漏れている事実をいち早く紹介している。

 いま大問題になっている汚染水についても、こうだ。政府が2011年4月に事故収束の工程表を出したとき「現場でオイラたちは『何だこの工程表? どっから出てきてるんだ? こんなの出来るわけねえべ!』って話してた」。

 その結果、同年5月28日には「トレンチから溢れるまで達するのは確実。東電はトレンチ上部をコンクリートで塞ぐらしいけど、他の弱い場所に圧力がかかり、また海に流れるんじゃないかなぁ?」と警告を発していたのだ。現状をこうみる。

「トラブルの多くは十分、予測出来たことなんだ。予算削減、設計簡素化、工期短縮、行き当たりばったりの対応・対策のツケが今になって露呈してきてる感じなんだよね」

 では、どうすれば良いか。

「やっぱ1F(第一原発)の収束作業は東電から切り離して、コスト度外視で新たな組織でやるしかないと思う」
「今のままじゃ40年後の廃炉とか絶対に不可能だよ」

 原発関連では、ある高級官僚も「若杉冽」というペンネームで『原発ホワイトアウト』(講談社刊)という小説を出している。政府の原発政策が嘘と秘密に覆われていて「このままでは、また事故が起きる」という内容だ。

「ハッピー」さんや「若杉」さんの訴えは「東電と政府のデタラメに黙っていられない」という現場からの内部告発である。1Fと霞が関という遠く離れた現場から、期せずして同じ声が上がったのは、事故対応の深まる矛盾を物語っている。

 この声を政府や東電はどう受け止めるか。それとも聞く耳を持っていないのか。

文■長谷川幸洋:東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。政府の規制改革会議委員。近著に『政府はこうして国民を騙す』(講談社)

※週刊ポスト2013年11月22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
【ギリギリセーフの可能性も】不倫報道・永野芽郁と田中圭のCMクライアント企業は横並びで「様子見」…NTTコミュニケーションズほか寄せられた「見解」
NEWSポストセブン
「みどりの式典」に出席された天皇皇后両陛下(2025年4月25日、撮影/JMPA)
《「みどりの式典」ご出席》皇后雅子さま、緑と白のバイカラーコーデ 1年前にもお召しのサステナファッション
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
ミニから美脚が飛び出す深田恭子
《半同棲ライフの実態》深田恭子の新恋人“茶髪にピアスのテレビマン”が匂わせから一転、SNSを削除した理由「彼なりに覚悟を示した」
NEWSポストセブン
保育士の行仕由佳さん(35)とプロボクサーだった佐藤蓮真容疑者(21)の関係とはいったい──(本人SNSより)
《宮城・保育士死体遺棄》「亡くなった女性とは“親しい仲”だと聞いていました」行仕由佳さんとプロボクサー・佐藤蓮真容疑者(21)の“意外な関係性”
NEWSポストセブン
卵子凍結を考える人も増えているという(写真:イメージマート)
《凍結卵子の使用率1割弱の衝撃》それでも「高いお金を払って凍結したのに、もったいない」と後悔する人は“皆無”のワケとは《増加する卵子凍結の実態》
NEWSポストセブン
過去のセクハラが報じられた石橋貴明
とんねるず・石橋貴明 恒例の人気特番が消滅危機のなか「がん闘病」を支える女性
週刊ポスト
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(写真は2019年)
《広末涼子逮捕のウラで…》元夫キャンドル氏が指摘した“プレッシャーで心が豹変” ファンクラブ会員の伸びは鈍化、“バトン”受け継いだ鳥羽氏は沈黙貫く
NEWSポストセブン
大谷翔平(左)異次元の活躍を支える妻・真美子さん(時事通信フォト)
《第一子出産直前にはゆったり服で》大谷翔平の妻・真美子さんの“最強妻”伝説 料理はプロ級で優しくて誠実な“愛されキャラ”
週刊ポスト
「すき家」のCMキャラクターを長年務める石原さとみ(右/時事通信フォト)
「すき家」ネズミ混入騒動前に石原さとみ出演CMに“異変” 広報担当が明かした“削除の理由”とは 新作CM「ナポリタン牛丼」で“復活”も
NEWSポストセブン
万博で活躍する藤原紀香(時事通信フォト)
《藤原紀香、着物姿で万博お出迎え》「シーンに合わせて着こなし変える」和装のこだわり、愛之助と迎えた晴れ舞台
NEWSポストセブン