ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」の第8回が開催され、今年は福島県双葉郡浪江町の「なみえ焼きそば」がグランプリに輝いた。今大会の開催地である人口20万人弱の愛知県豊川市に2日間で40万人を超える人が訪れ、入場制限される駅の様子もネット上で話題になった。B級グルメは今や人気ジャンルのひとつだが、最近は各地で「C級グルメ」という新カテゴリが誕生している。C級を名乗る人たちに、なぜ「C」なのかを聞いてみた。
食パンに水で溶いた小麦粉とパン粉をつけて、ラードで香ばしく焼いた「パンカツ」は八王子のC級グルメ。10月に発足した日本パンカツ協会の加藤一詞さんによれば、「B級と呼ぶほどリッチな食べ物じゃないので」C級グルメとしたのだという。
パンカツはもともと、八王子駅北側のお好み焼き屋などで食べられていた地域密着の食べ物。今年の八王子まつりにあわせ開催されたイベントで地元商店街に結成されたまちづくりチームと地元ケーブルテレビ、東京工科大学の学生らがお祭り向けメニューとして再発見し販売した。予想以上に好評で、これから食べられるチャンスが増えそうだ。12月8日には専用ソースを開発したソースメーカーのポールスタアいちょう祭りにも登場する。
「ラードさえあれば簡単に作れるのがパンカツです。初めて食べる学生さんも予想外に美味しいと驚いていました。気取らないC級グルメを入り口に八王子という町に親しんでもらう町づくり、町おこしへ最終的につながればと思っています」(前出・加藤さん)
特定のメニューではなく、市民による地元食材を利用した料理を「C級グルメ」と呼びイベントを開催している自治体もある。来年3月に第3回C級グルメ選手権を開催する茨城県小美玉市だ。市町村合併で小美玉市が発足した記念日、市民の日の人気企画のひとつで、地元産の食材を使用した出展者が1品300円程度で販売している。小美玉市秘書広聴課の小川和夫さんによれば、C級グルメのCには、さまざまな意味を込めているという。
「CにはCitizens(市民)、Community(地域)、Country(地元の)、Cheap(安価な)などの意味を込めています。ニラやレンコン、霞ヶ浦で獲れるざざエビなど地元産の食材を使った料理が並び、人気イベントのひとつです。今は地元だけで知る人ぞ知る料理ですが、ゆくゆくは、笠間のいなり寿司のように小美玉の定番メニューとして定着するとよいなと考えています」
今月10日に第3回C級グルメ選手権を開催予定だったが、台風26号の影響で中止になってしまったのは伊豆の大島町だ。「地元の食材を利用したイベントを開催しようと考えたとき、B級は洗練されていて名乗るのに勇気がいるけれど、『C級』なら気負わず気軽に名乗れるうえ、かえって注目を浴びるのではないかと考えて名づけました」というのは、同選手権実行委員会の高橋千香さんだ。
名称を決めたあとに「C」にはチャレンジ、カントリー、コミュニケーションや大島のシー、海のシー(Sea)など伊豆大島にちなんだあらゆる意味を盛り込んだ。参加条件は大島産の食材を使用すること。観光客にもおなじみの魚介類や食用の椿油、アシタバなどだけでなく、小学生が採ったオオシマザクラの実や青トウガラシ、大島牧場のバターや海塩などが利用され、大島の食の豊かさを地域住民が再発見するきっかけにもなった。
「大島町の住民による大島町に住む人へ向けた気軽なイベントとして始まりましたが、去年の第2回目にはオフシーズンにもかかわらず、観光のお客さんの姿も少なくありませんでした。今年は観光で訪れたいと問い合わせを受けるほど評判が広がり始めていたのですが、台風26号の影響で中止になったのは残念です。いまは、あらためて大島町のC級グルメを楽しめる機会をつくる準備をしています」(前出・高橋さん)
AKB48がデビューしたときのキャッチフレーズは「会いに行けるアイドル」だったが、大きな存在になり気軽に会いに行ける人ではなくなった。B級グルメも大きくなりすぎて、地元に住んでいるのに食べたことがない、食べる機会がない存在になってしまったものもあるのではないか。地元密着のC級グルメこそ、ご当地グルメとして今後、注目のジャンルといえるかもしれない。