いまやコンビニの顧客争奪戦に欠かせない商品となっている「いれたてカウンターコーヒー」。業界トップのセブン―イレブンは全1万6000店舗にドリップマシンを導入し、1店あたり1日80杯以上を販売。累計の販売数は2億杯を突破したというから驚きだ。
そんな王者セブンの牙城を切り崩す目的だけでなく、スターバックスやタリーズといったシアトル系カフェチェーンの顧客まで奪おうと鼻息が荒いのが、業界2位のローソンである。
現在、ローソンのカウンターコーヒー設置店舗は約5000店。1店あたりの売り上げは1日50~60杯と、先行するセブンに水をあけられてはいるものの、徹底した差別化による販売増に自信をのぞかせる。
「2011年1月から展開している『MACHI cafe(マチカフェ)』は単なるコンビニコーヒーではありません。こだわり抜いた品質とスタッフによる1対1の対面販売を強化することで、お客様に繰り返し利用してもらいたい」
11月12日、希少なコーヒー豆「イエローブルボン」を100%使ったスペシャルコーヒーの数量限定販売(12月10日より)を発表した玉塚元一COO(最高執行責任者)は、“心のこもった接客”を強調した。
商品の品質はもとより、ローソンがここまで店頭での接客レベル改革に取り組んでいるのはなぜか。コンビニ業界の専門紙『コンビニエンスストア速報』編集長の清水俊照氏が解説する。
「少子高齢化の影響で、これまでコンビニの主要顧客だった20代、30代男性の比率がどんどん下がる一方、50代以上の客層が4割を超えるまでになりました。つまり、接客にうるさい高齢者に対応したスタッフ教育をして、リピーターを増やそうという戦略なのです。“ファンタジスタ”制度を設けているのもその一環です」
清水氏のいうファンタジスタとは、接客レベルが高くコーヒーの知識に長けたスタッフに対して、ローソンが昨年から独自に認定している有資格者のこと。合格率16%という狭き門を突破した505名のファンタジスタたちが各店に散らばり、街中のカフェ並みの模範接客をすることで、店全体のモチベーションアップに繋げていこうという狙いなのだ。
まるでスタバの「バリスタ」(コーヒーをいれるスタッフ)教育のようだが、カフェチェーン追撃への構えはまんざらでもない。
「店舗数の多いコンビニは、良質のコーヒー豆を大量に買い付けて安く提供することができる。スタバやタリーズの品質に少しでも近づけて、リーズナブルな価格で勝負したい。そのためにもコーヒーの魅力や美味しさを伝えるファンタジスタの存在は大きい」(ローソン広報責任者)
その言葉通り、ローソンはシアトル系カフェを脅かす存在となれるのか。
「豆の焙煎方法や抽出マシンの技術革新は目覚ましいものがあります。スタバやタリーズの高いコーヒーは手が出にくいという客層を取り込む余地はまだ十分にあるでしょう。あとはイートインスペースの拡大など購入しやすさをいかに追求していくかだと思います」(前出・清水氏)
今後、コーヒーやカフェラテに合う焼き菓子、それにタンブラーなど周辺商材も充実させると意気込むローソン。コンビニコーヒーの主導権争いは業界内の枠組みを超え、新たなステージに入ったのかもしれない。