安さをウリに今や世界中の家庭に浸透した中国製家電製品。しかしその実態は、家主の目を盗んで周囲のコンピュータに不正アクセスし、ウイルスを拡散させるサイバー兵器だった──。
何もSF映画の話ではない。10月下旬にこの驚愕のニュースが駆け巡ったのは、中国のお隣、ロシアだった。サンクトペテルブルクで、中国から輸入されたアイロンにマイクロチップが入っているのが発見されたのだが、このチップは半径200メートル以内でWi-Fi(ワイファイ。無線LANの一種)を利用しているコンピュータに侵入し、ウイルスに感染させるように設計されていたという。
チップは家電がコンセントに繋がれた電力を利用し起動する仕組みになっており、同様のチップは中国製の携帯電話やカメラなどからも発見されたという。恐るべき事態だが、いったい誰が何のためにこんな細工をしたのだろうか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏が語る。
「何らかの軍事的な実験の可能性があります。例えば、一定の範囲内に存在する通信機器を攻撃するIT兵器の試験段階として、ウイルスをばらまくことができるかどうかを試したのではないでしょうか」
今年の2月にはアメリカの情報セキュリティ会社が、中国人民解放軍の「61398部隊」が米国企業からの知的財産収奪を繰り返していると公表。アイロンから発見されたチップが、人民解放軍の新兵器であったとしてもおかしくはないが──。
「もちろん、単なる愉快犯の可能性もありますし、中国政府に対抗する勢力が、国外の同志と秘密裏に連絡する手段を模索していた可能性もあります」(井上氏)
もしかすると、あなたの家にも既に“スパイ”が潜んでいるかも知れない。
※週刊ポスト2013年11月22日号