昨年11月10日に亡くなった森光子さん(享年92)は今この地で静かに眠っている――。寺院がずらりと並ぶ京都市・寺町通の一角に、500年の歴史を持つ、由緒ある古刹が建っている。観光寺院ではないため、境内は人影もまばらで、小鳥のさえずりだけが聞こえてくる。森さんのお墓は、この寺の境内にあった。
しかし、森さんは今から23年前、茨城県つくば市のある霊園の一角に、お墓を購入していた。後に森さんは、菩提寺である京都の寺院から母・艶さん(享年53)の遺骨をここに移している。自分が死を迎えた時には、母と一緒にその墓に入るつもりだったのだろう。
しかし、森さんの一周忌を前に、本誌がこのお墓を訪れると、信じられない光景が広がっていた。森さんが生前建てたお墓が、なくなっていたのだ。すでに更地になっており、周囲ではショベルカーが地ならしをしていた。霊園関係者がこう語る。
「このお墓はもう必要なくなったので、撤去することになったんです…」
森さんの知人がこう語る。
「森さんのご両親は、父側の親族の反対もあって籍を入れておらず、森さんが生まれても、お父さんからは認知さえしてもらえなかったんです。なので、お母さんは旅館の女将をしながら、女手ひとつで森さんを育てました。
仕事の合間に百人一首で遊んであげたり、旅館の裏の鴨川を一緒に散歩したり、森さんが13才の時に死別するまで、お母さんはただひたすら森さんに愛情を注いで生きてきました。森さんも、そんなお母さんを誰よりも愛していて…。この京都という地は、森さんにとって、子供の頃、最愛のお母さんと一緒に過ごした時間が流れている場所なんです」
この知人によれば、森さんは亡くなる直前、こう話していたという。
「つくばにお墓を用意したけど、やっぱり私は、お母さんが愛した町で、お母さんと一緒のお墓に入りたいの…」
そんな森さんの遺志に沿うように、京都のお墓に納骨されたのは、今年3月のことだった。
「それまで、森さんの遺骨は彼女の自宅に安置されていました。四十九日を過ぎても、東山紀之さん(47才)や滝沢秀明さん(31才)など、生前親交のあったかたがたがお線香をあげにいらっしゃるので、しばらくそのままにしてあったんです」(前出・森さんの知人)
森さんは今、最愛の母と共に安らかに眠っている。
※女性セブン2013年11月28日号