シリコンバレーといえば世界有数のIT企業が集中している場所だ。なかでもインターネット検索最大手のグーグルは、巨大なだけでなく、高成長を維持している。グーグルの成長力の秘密を、大前研一氏が解説する。
* * *
インターネット検索最大手のグーグルは、7~9月期決算の売上高が前年同期比12%増の148億9300万ドル(約1兆4600億円)、純利益が同36%増の29億7000万ドル(約2910億円)に達し、四半期売上高の過去最高を更新した。なぜグーグルは高成長を持続できているのか?
グーグルが早くから注力しているのが「地図」で、「グーグルマップ」から「グーグルアース」へとサービスを拡大した。
グーグルマップの「ストリートビュー」は、プライバシーの問題もあったが、車に搭載したカメラや人力によって世界中の道路を360度パノラマ画像で撮影し、今では世界各地を「通りに立った目の高さ」で見渡すことができるようになった。
富士山の山頂や熊野参詣道などの画像も網羅されており、国内外の名所旧跡をバーチャル散歩したり、次の旅行のプランを立てる参考にしたり、待ち合わせ場所やレストランを確認したり、多種多様な利用法がある。
グーグルアースは、地球上のどんな場所でも衛星写真、地図、地形、3Dの建物などを見ることができ、中国や北朝鮮の軍事基地も一目瞭然で、海底の景観や宇宙の銀河といった未知の世界も楽しめる。
そして凄いのは、これらの技術が「ネット」世界から「リアル」世界への橋渡し役になりつつあるということだ。ここに、さらに巨大な生態系が生まれている。
たとえば、すでにグーグルアースとグーグルマップのストリートビューの画像を組み合わせたカーナビが登場している。今のカーナビは案内画面が無機質な平面図で出てくるが、グーグル版のカーナビはストリートビューと同様に運転者が見ているのと同じ立体図(風景写真)で案内画面が出てくるのだ。
しかも、グーグルは「自動運転車」の開発で世界をリードしている。ストリートビューの撮影に使われているのはトヨタ自動車の「プリウス」だが、すでにグーグルはこのプリウスとグーグルマップ、センサーなどを組み合わせた自動運転車で50万マイル(約80万km)を走破したと報じられている。
自動運転車の開発を進めているのはグーグルだけではない。トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業の日本勢をはじめ、アメリカのGM(ゼネラル・モーターズ)やドイツのダイムラーなども続々と発表している。
自動車のコスト構造に占めるエレクトロニクス・ソフトウェアの割合は2015年に40%に達すると予想されているため、かつての自動車産業の聖地・デトロイトがゴーストタウンになったのとは対照的に、グーグル本社があるシリコンバレーには世界の主要な自動車メーカーの研究開発拠点が集結している。
つまり、今やグーグルの生態系に触れることができるシリコンバレーでなければ、自動運転車などのICT(情報通信技術)は開発できないという状況になっているのだ。
※週刊ポスト2013年11月22日号