最近、インターネット上で、自らのワキ毛を生やした映像を動画サイトに投稿する女性が増えているというが、医学的にはワキ毛は、異性を引き寄せる性ホルモンを出すアポクリン汗腺を守るための重要な役割があるという。
そんな重要な毛を、日本人はいつ頃から処理するようになったのだろうか。既に平安時代には、貴族の間ではうぶ毛を抜き額の形を整えたり、眉毛を整える“脱毛”の習慣があったとされている。
ワキ毛の処理が始まったのは大正時代という説が有力だ。1915年頃、アメリカの女性向けファッション誌が〈夏服を着るならワキ毛を処理しよう〉という広告を掲載。これが火付け役となり、アメリカでワキ毛処理のブームが始まった。程なくして、日本でも肩を露出させる「夜会服」を着るような上流階級の女性の間でワキ毛処理が広まっていったという。1924年に発表された谷崎潤一郎の小説『痴人の愛』にもこんな一節がある。
〈洋服を着るには腋の下を剃るもんよ、此処が見えたら失礼じゃないの〉
洋服文化がさらに浸透する中で、女性の価値観は変化していったようだ。日本の風俗文化に詳しい国際日本文化研究センターの井上章一氏がいう。
「多くの一般女性がワキ毛の処理を始めたのは1960~70年代からでしょう。日本人もノースリーブを着始めた頃からエチケットとして広まっていったと考えられます。それ以前は、ワキ毛がない人を見かけると“無毛症では?”と勘違いされたり、キャバレーのダンサーやホステスだと思われる風潮でした。剃毛している人は下品な商売女性という考えが、ハリウッド映画や西洋文化に影響され、次第に女性の嗜みとして受け入れられていったのです」
そして、ワキ毛を生やした女性にお目にかかる機会は、今やほぼ皆無といっていいのではないだろうか。今回の撮影モデル・斉木ゆあちゃんも、「裸を見られるよりワキをジックリと見られる方が恥ずかしい」と話す。
撮影■佐藤佑一
ワキ毛をつけてくれたモデル■斉木ゆあ
※週刊ポスト2013年11月22日号