国内

阪急阪神ホテルズ元従業員「原価率は10%が上限だった」

 阪急阪神ホテルズをきっかけに、名門ホテルや百貨店に広がっていった食品偽装問題。なぜこれほど偽装は繰り返されてきたのか。消費者問題研究所代表の垣田達哉さんはこう分析する。

「偽装の最たる目的は利益追求です。安い食材を高い食材として偽り、差額を儲けることが“食品偽装史”における最大の特徴なのです」

 今回偽装が発覚した名門ホテルや老舗百貨店もまた、理由は同じ。ホテル業界に詳しいジャーナリストの桐山秀樹さんは、長引く不況が一因と指摘する。

「阪急阪神ホテルズの偽装が始まったのは、リーマンショックのあった2008年ごろからです。景気が落ち込み、ホテルを接待需要で利用する客足も途絶えた。客室は宿泊料金を下げるなどしてなんとか対応したが、飲食は戻らなかった。“この不景気に高級レストランなんて…”と敬遠され、その結果、売り上げが落ち込み、最初に人件費、そして最も手をつけてはならない食材費まで削ることになった」

 阪急阪神ホテルズ系のあるホテルの元従業員が重い口を開く。

「うちのホテルはとくに利益優先でコスト削減要求が本当にきつかった。料理の原価は提供価格の10%が上限。仕入れ担当者は『いいものが仕入れられへん』と嘆いていましたよ。そこで、芝えびの代わりに、1kg当たり900円ほど安価なバナメイエビで代用せざるを得なくなった。その一方で営業は『客を呼べるメニューを』という考えのもと、産地や食材を“名のあるまま”にしていたのです」

 つまり、各部門がそれぞれのノルマを達成することを至上命題とし、チェックが全く働かなかったということ。前出の桐山さんは、レストランにかかわる人の働き方の変化も、偽装の一因になったと分析する。

「それまで、一流ホテルにはその人の料理を食べにお客さんが来るほどの名物シェフというものがいました。しかし不況で高給が払えず、多くが独立してしまった。ホテル側はホテルブランドやシェフの名前で客が呼べないため、代わりに食材や産地をことさらに強調するようになった。誇りと責任をもって食材の味や質を管理していたシェフがいなくなり、“サラリーマンシェフ”が増えたことで、誰も“上”の指示に反対できなくなったのではないでしょうか」(桐山さん)

 大阪市にある市場の卸業者の言葉は辛辣だ。

「今回偽装された食材は、調理してしまえば違いが判別しづらいものばかり。『どうせ、一般のお客にはわからんやろう』と思って出したんやろうな」

 実際、今回名前が挙がったところはいずれも同業他社などの発表を受けた“自主的”な内部調査による食品偽装の発覚。逆に言えば、それまでは「バレないから」とズルズルと悪事を続けていたのだ。

※女性セブン2013年11月28日号

関連キーワード

トピックス

精力的な音楽活動を続けているASKA(時事通信フォト)
ASKAが10年ぶりにNHK「世界的音楽番組」に出演決定 局内では“慎重論”も、制作は「紅白目玉」としてオファー
NEWSポストセブン
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
ショーンK氏
《信頼関係があったメディアにも全部手のひらを返されて》ショーンKとの一問一答「もっとメディアに出たいと思ったことは一度もない」「僕はサンドバック状態ですから」
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
ショーンK氏が千葉県君津市で講演会を開くという(かずさFM公式サイトより)
《ショーンKの現在を直撃》フード付きパーカー姿で向かった雑居ビルには「日焼けサロン」「占い」…本人は「私は愛する人間たちと幸せに生きているだけなんです」
NEWSポストセブン
気になる「継投策」(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督に浮上した“継投ベタ”問題 「守護神出身ゆえの焦り」「“炎の10連投”の成功体験」の弊害を指摘するOBも
週刊ポスト
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
九谷焼の窯元「錦山窯」を訪ねられた佳子さま(2025年4月、石川県・小松市。撮影/JMPA)
佳子さまが被災地訪問で見せられた“紀子さま風スーツ”の着こなし 「襟なし×スカート」の淡色セットアップ 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン