「裸官」と書けば、着る物もなく、質素に勤める高級官僚を想像するだろう。たしかに、中国の「裸官」は資産を国内には持っていない。だが、海外に住まわせている妻や息子、娘には、アラブの石油王もビックリの資産がある。それは、いざ国外逃亡を図る時、いつでも自分は裸の身ひとつで、逃げやすいから──。
習近平政権が反腐敗キャンペーンを展開しているが、不届き者の党幹部らは、いつも賄賂で得た不正蓄財をいかに海外に移すかに腐心している。たとえば、先月末に無期懲役刑が確定した元重慶市トップの薄熙来氏も息子を米国に留学させ、5880億円を海外送金していたことがわかっている。
この10年間で、裁判やメディアで指摘された主な官僚の蓄財をまとめたが、その金額には目が眩むほどだ。副市長程度で賄賂が40億円とは、日本人の想像をはるかに超えている。
だが、それもごく一部にしか過ぎないだろう。たとえば、320億円の賄賂を受け取ったとして更迭された元鉄道相の劉志軍氏は、今年4月の香港紙で、在任期間中、数十兆円の鉄道建設資金を着服したと報じられた。同様に他の役人も、実際の蓄財額が何百倍、何千倍に上ると見られる。
その一方、中国では2億人とも4億人ともいわれる貧困層が存在する。その中でも、富裕層の姿を間近に見て、不満を募らせているのが「鼠族」と呼ばれる人々だ。地方から大都市に出稼ぎに来たものの、低賃金のために地上に住むことができず、ネズミのように暗いビルの地下などに住むことから名づけられた。
大半は昼間、建設現場で働き、夜は煌びやかなネオンを尻目に4畳ほどの暗い地下室に帰る。どんなに頑張っても月収は1万6000円ほどにしかならない。
北京には、そうした鼠族が100万人いるとみられている。裸の官僚に、ネズミが噛みつく日が、早晩やってくるだろう。
※週刊ポスト2013年11月22日号