今年のプロ野球は、楽天の日本一で幕を閉じたが、その立役者の一人が藤田一也だ。日本シリーズ第5戦で、死球を受けながらも、気力で出場し続け、最終的には足を引きずりながら交代した藤田の姿には、多くのファンが感動した。
昨年まで無名だった藤田だが、今年は楽天のセカンドとして再三再四に渡り、守備で貢献。星野仙一監督が「藤田の守備のおかげで10勝は拾っている」と話すほどだ。
元を辿れば、2004年秋のドラフト4巡目で横浜に入団。昨年シーズン途中に内村賢介との交換トレードで楽天にやってきた。あるスポーツライターはこう話す。
「ここ数年、横浜から選手を獲得したチームが優勝や日本一に輝くというジンクスがあるんです。最下位が定位置の横浜から離れ、優勝の可能性の高いチームに移籍することでモチベーションが上がるのは自明の理でしょう」
2010年はシーズン途中に金銭トレードで吉見祐治がロッテに入団。すると、ロッテはシーズン3位ながらも、クライマックスシリーズを勝ち上がり、日本一に輝いた。2011年はFAでソフトバンクに加入した内川聖一と戦力外通告から中日に拾われた佐伯貴弘、2012年はFAで巨人入りした村田修一と日本ハムへ出戻りしたターメル・スレッジが、それぞれペナントを制した。
そして、今年は戦力外通告を受けた福山博之が楽天に移籍し、中継ぎとして22試合に登板。藤田と共に日本一に貢献している。
「スレッジは横浜時代より成績が落ちましたが、それでも日本ハムが優勝するところに何かジンクスを感じますね。今年の楽天にはメジャー帰りの斎藤隆もいましたが、彼も元は横浜の選手です。
古くは横浜の前身である大洋時代からこの傾向はありました。首位打者も獲得した生え抜きの長崎啓二が、1985年にトレードで阪神に移籍すると、そのまま日本一に。長崎は日本シリーズ第6戦で満塁本塁打も放っています。優勝こそ逃していますが、亀山・新庄フィーバーに沸いた1992年も、大洋から阪神に移籍したパチョレックが大活躍しました。この傾向は、横浜が弱体化した2000年代以降、特に顕著ですね」(同前)
2000年オフ、横浜は1998年優勝時の貴重な中継ぎで、この年も21試合に登板していた島田直也を自由契約に。翌年、島田は移籍先のヤクルトで53試合に投げ、防御率2.91と復活。ヤクルト4年ぶりの日本一に貢献した。
この2001年は、これまた優勝メンバーの関口伊織をシーズン序盤に近鉄へトレード。すると、関口は貴重な左の中継ぎとして、島田と同じく53試合に投げ、近鉄を12年ぶりの立役者の一人となった。
落合博満監督就任以降の中日の連続Aクラスにも、横浜は貢献している。2003年限りで、8勝を挙げていたドミンゴを解雇。翌年、森繁和投手コーチのツテもあり、中日に移籍すると、ドミンゴは先発の柱として2ケタ勝利をマークした。
「タイロン・ウッズやマーク・クルーンは他球団に奪われた格好になりましたが、チームの核である寺原隼人や多村仁を放出するなど、トレード失敗を繰り返してきたことも事実。一昨年から親会社がDeNAに代わり、フロントが刷新されましたが、藤田の放出は中畑清監督の意図ではなく、完全にフロント主導。
今シーズン活躍した中村紀洋や鶴岡一成との契約交渉にしても、しこりを残すやり方をしている。今年は6年ぶりに最下位を脱出した横浜ですが、来季が明るいとはいえません」(同前)
ちなみに、今季限りで横浜から戦力外通告を受けた森本稀哲は、西武への移籍が確実視されている。ジンクスに従えば、来季は西武優勝となるが、はたして……。