阪急阪神ホテルズに端を発した食品偽装問題が燎原の火のごとく、全国の一流ホテルや有名百貨店などへと広がっている。
次々とあらわになる偽装に、「こんなに多いのか」と驚くばかりだが、まだ実態がすべて明らかになったわけではない。偽装問題に詳しい食品ジャーナリストの椎名玲さんは、「今、表に出ているのは氷山のほんの一角」と指摘する。
「今回、高島屋や大丸松坂屋も問題になりましたが、もともとおせち料理は偽装食材が使われやすいんです。車えびの代わりにブラックタイガーを使うどころか、一度バラしてから固める“成型カズノコ”や中国産煮物なども多く、絢爛豪華な“偽装重箱”が世に出回っていることは知る人ぞ知る話。出るべくして出た感じです」
奈良市にある「万葉 若草の宿 三笠」や髙島屋など多くのレストランでは、「成型肉」をステーキとして提供していた。
成型肉とは、安価な外国産牛などのくず肉をかき集めて型に入れ、食品結着剤で固めたものや、高級な国産霜降り肉に見せかけるため、和牛から取った牛脂を赤身肉に注入したものなどを指す。
椎名さんは、低価格が売りの焼肉店、しゃぶしゃぶ・すき焼き店などを中心に、一般の飲食店にも成型肉が蔓延しているという。
「見た目は本物の肉にそっくりで全然わからない。食べ放題のしゃぶしゃぶ店では最初に普通の肉を出して、2皿目から成型肉を出すなんてこともあります。ホテルの結婚式や宴会でもよく使われていますよ」(椎名さん)
実はこの肉、安全面も不安だらけなのだ。
「加工時、注射器や剣山の針のような機械で牛脂を肉に注入するんです。そうすると肉の内部に雑菌が入り込みやすい。中まで火を通さないと食中毒の危険性も高くなります」(椎名さん)
NPO法人・食品と暮らしの安全基金代表の小若順一さんが最も懸念するのは食品アレルギーだ。
「三笠が仕入れた成型肉のラベルには、『原材料の一部に乳、大豆、小麦を含む』と記されていましたが、お客さんには“ステーキ”とだけ伝えてアレルギー物質が含まれていることを表示していませんでした。
知らずに食べればもちろんアレルギー症状が出ることはあるし、しかも被害者は何が原因なのかわからない。極めて悪質な行為です」
※女性セブン2013年11月28日号