プロは結果がすべてとはいわれても、ここまで大ナタをふるったケースは過去にはないだろう。契約更改の内容を報じる新聞紙面には「減額制限いっぱい」の文言が何度も踊り、将来の幹部候補生だと思われていたベテラン・井端弘和に至っては、前年の88%減という常識では考えられない下げ幅だった。
しかし落合GMにとっては、これこそが「常識」なのである。なぜなら選手たちは球団に雇われた会社員ではなく、成績に応じて年俸が変わる個人事業主であり、所属球団は12年ぶりのBクラスに沈んだからだ。空前の大減俸ラッシュにも、落合博満GMはいつもと変わらぬ涼しい顔で、こう言い放つのみだった。
「このチーム、何位だったの? Bクラスの責任は選手にもある。間違った評価であれば、彼らはハンコを押さないでしょう。勝てば上がる。そうやって(年俸が)上がってきたはず」
主な大減俸組は、以下の通りである。
●井端弘和 1億9000万→3000万(▲1億6000万。退団)
●吉見一起 2億9000万→1億7400万(▲1億1600万)
●和田一浩 3億3000万→2億5000万(▲8000万)
●荒木雅博 1億7000万→1億200万(▲6800万)
意外なのはこうした査定に対して、一度も保留することなく、選手たちが黙って従っていることである。プロ野球選手の労働組合である日本プロ野球選手会に訴えて、“組合問題”にしてもおかしくない内容にも思えるが……。
「そもそも現在、選手会の副会長を務めている吉見が減額制限いっぱいの40%減でサインしていますからね。選手たちが何か諦観の境地に達したかのような表情で、会見に臨んでいたのが印象的です」(スポーツ紙記者)
なぜ選手たちは刃向かおうとしないのか。
「相手が落合さんだから、蛇に睨まれた蛙になっているんですよ。落合さんの監督時代に直々に査定された選手が多いから、やり口や考え方は皆が心得ている。誰よりもルールに詳しく、残酷なまでに合理的。落合さんにいわれてしまえば何も反論できないし、刃向かったら大きな“しっぺ返し”が来ることがわかっている。だから皆諦めているんです」(同前)
※週刊ポスト2013年11月29日号