韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領就任から9か月、いまだに日韓首脳会談が開かれない異常事態が続いている。「日韓冷戦」といわれるほど両国の関係がこじれるとは、9か月前、両国民とも想像さえしていなかったに違いない。
朴氏の父親は元大統領の朴正熙(パク・チョンヒ)氏だ。東京の陸軍士官学校を卒業し、終戦まで関東軍の中尉。1965年には、日韓基本条約を結んで日本と国交を樹立した。しかも、安倍首相の祖父である岸信介・元首相と深い親交を結んでいた。
「安倍首相と朴大統領の深い縁は、ぎくしゃくしている日韓関係を改善させてくれるはずだ」
そう考えていた日韓の政界人、財界人、一般国民は多かった。だが、その期待は、朴氏のその後の行動によって、完全に裏切られた。
東アジア外交を担当してきたアメリカの国務省高官OBが話す。
「朴氏は、父親が日本と深い関わりを持っていたことに、親日が犯罪的であるとされる国の政治家として負い目を感じていた。ところが安倍氏は、好意からでしょうが、今年2月の訪米時の講演で『私の祖父と朴大統領のお父様は親しかった』と発言した。朴氏からすると、A級戦犯被疑者である岸氏と父親の仲を世界に向かって公言されたわけだ。それに朴氏は激怒したと聞いている。
それ以来、朴氏は外交の基軸に日本の戦争犯罪に対する完全な謝罪と補償を据えてしまった。ハタ迷惑な話だが、“反日”に政治生命を懸けたといっていい」
※週刊ポスト2013年11月29日号