日本で最も権威ある公募美術展「日展」の書の部門で不正が明らかになった。このような理不尽は、決して書道の世界に限った話ではない。サラリーマンや事業主であれば、一度は「どうしてこんな不平等がまかり通るんだ!」と叫びたくなるような出来レースの現場に遭遇したことがあるだろう。
某メーカーに勤める40代の会社員は、つい先日もはらわたが煮えくり返るような思いをしたばかりだという。
「社内で主力製品のリニューアルをすることになり、新デザインを決めるコンペが行なわれたんです。“旧来の古くさいデザインを一新したい”という狙いだったはずなのに、コンペの結果採用されたのは、旧モデルのデザイナーが提案したデザインだった。
しかも、そのデザイナーの案は最終選考に残っていなかったのに、“これまで長らくお世話になってきたから”と重役の鶴の一声で最終選考に“復活”したんです。採用されたデザインは、はっきりいってこれまでと代わり映えしないもの。現場では“これじゃあ会社は変わらない”と士気が下がりまくっている」
30代のIT企業社員も“勝者の決まっている戦い”に挑んで苦杯を嘗めた。
「社内で海外留学の公募があり、勇んで応募したのですが、同僚から“もう部長の大学の後輩に決まっているから期待するな”と忠告された。結果は同僚がいったとおりになり、真剣に将来を考えたことが馬鹿らしくなった」
この社会では、様々な局面で「あらかじめ勝敗の決まった競争」が、露骨に存在しているのである。
※週刊ポスト2013年11月29日号