国内

M4地震100%予知成功と豪語する研究家があちこちにいる理由

 南海トラフ大地震をめぐる予測記事は多くある。だが、あまりに自由奔放、かつ荒唐無稽な予知報道で恐怖心を煽るのはいかがなものか。地震学者で武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が苦言を呈する。
 
「だいたい、この手の予測をする“専門家”の多くは、地震学で認められている学説以外のところに、独自の根拠を持っていることが多い。たとえば“地震雲”です。雲の形といえば多種多様なものがある中でちょっと地震の前に変わった雲を見つけただけで“あれは予兆だったのだ”と言っているだけの話。何の客観性もない」
 
 独自とは言え、当たっていれば結果オーライの面もあるが検証してみると当たったとは言い難い。しかし、その結果を当たったと言いはることもできるのだ。
 
 詳しく述べよう。東京大学大学院教授で地震学に詳しいロバート・ゲラー博士が論破する。

「当たったか、当たらなかったかの評価には、【1】場所、【2】時間、【3】規模の特定が求められます。自称“的中者”は、この3項目をなるべく曖昧にして発表し、結果として的中率を稼ぐんです」

 たとえば、こんな風に予測をしてみよう。【1】関東地方で、【2】今月中に、【3】M3程度の地震が起きる!

「その的中率は、100%ですよ。日本の周囲では、いつも地震が起こっているんですから」

 気象庁によれば、2013年8月中に、日本国内で震度1以上を観測した地震の回数は209回。その周辺で発生したM4.0以上の地震の回数は90回という。

 なるほど。であれば、「M4クラスの地震ならば、ほぼ100%予知に成功している」と豪語する自称・地震予知研究家があちこちにいるのは不思議ではない。また、宗教や迷信といった類には関心の少ないとされる日本人だが、こと地震に関しては違うようだ。

 よく聞く話では地震発生直前にペットが異変を感じて鳴き声を上げていたというもの──古来から言い伝えられ信憑性もありそうだが、心理学者で信州大学准教授の菊池聡氏はいう。

「ペットの異変のほとんどは、地震が起こった後に思い返して『そう言われれば』と当てはまるケースを無意識に探し出してしまっているに過ぎない。こうした予知の多くは“直前の異変”と“地震の発生”に何ら関連性もない。専門の研究者でさえ、自らの説を補強するために無意識にそういった証拠集めをしてしまう」

 菊池氏は、さらに続ける。

「予知が外れた場合、『外れても、これをきっかけに防災意識を高めてくれたらそれで意味があった』というような発言が聞かれますが、これは科学者が口にすべき言葉ではないでしょう」

※週刊ポスト2013年11月29日号

関連記事

トピックス

国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン