巨人・小笠原道大(40)がFA(フリーエージェント)宣言をした。2010年の統一球導入から打棒が奮わなくなり、今年はわずか22試合出場で打率2割5分、1本塁打、8打点と成績を残せず。日本シリーズに出場できる40人枠から外されたことは、実質的な戦力外通告に等しかった。
それでも、巨人は小笠原を自由契約にはせず、トレード要員と噂されていたが、小笠原はみずから手を挙げ、現役続行を表明した。
小笠原といえば、2006年オフに日本ハムから巨人にFA移籍。このとき、巨人は4年連続V脱という低迷期。そのピンチを救ったのは、小笠原のバットだった。チームを5年ぶりの優勝に導き、MVPを獲得。リーグをまたいでの2年連続受賞は史上初の快挙だった。以来、4年連続で3割30本塁打を達成し、名実ともに巨人の顔となっていただけに、この退団の経緯は残念だろう。
巨人は、1993年オフの落合博満を皮切りに、一昨年オフまでに15人のFA選手を獲得してきた。FAで巨人入りすれば、高年俸と引退後の生活が保証されそうなものだが、どうもそう簡単にはいかないようだ。
実は、過去の15人のうち、そのまま巨人で引退した選手は川口和久(広島→巨人)だけ。これまで、現役の村田修一、杉内俊哉を除く12人が自由契約やFAの人的補償で巨人を去っている。小笠原のように巨人へFA移籍した選手がFAで他球団移籍するのは、初のケースだ。自由契約組は8人。
巨人初のFA獲得選手である落合博満は、3割を打った1996年オフに日本ハムに移籍。その落合を追い出した形となった清原和博(西武→巨人)は2005年オフに自由契約となり、オリックスに移籍した。広沢克己(ヤクルト→巨人)は阪神、河野博文(日本ハム→巨人)はロッテ、豊田清(西武→巨人)は広島で現役を終えている。
野口茂樹や前田幸長(ともに、中日→巨人)、門倉健(横浜→巨人)は、日本のプロ球界では巨人が最後の所属球団だが、その後アメリカに渡り、メジャーに挑戦している。彼らはいずれも、最終的には巨人から戦力外通告を受けている。
巡り巡って、みずからがFA人的補償の対象になるのも、巨人にFA移籍してきた選手の宿命か。江藤智(広島→巨人)は西武、工藤公康(ダイエー→巨人)は横浜、藤井秀悟(日本ハム→巨人)も横浜へ去って行った。
なお、引退後、巨人のコーチに就任したのは、川口和久、江藤智、豊田清の3人しかいない。現在、現役で巨人に残る2人のFA移籍選手、村田修一と杉内俊哉はどうなるか。