芸能

視聴率一桁でも「上質なサスペンス・ドラマ」女性作家が推薦

 視聴率がドラマの出来をはかる大きな物差しであることは間違いないが、さほど数字が出ていなくても「上質」なドラマはある。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏がガイドする。

 * * *
 10月期のドラマも中盤にさしかかり、「自分にとって魅力的なドラマとは何なのか」をふと考えてみたくなる時期。視聴率の上位を眺めれば、「リーガルハイ」「相棒」「ドクターX」。ドラマが人気を集めるためには個性派なキャラが必要、そう言わんばかりの結果です。

 でも、際立ち個性派キャラの主人公と、今ひとつ相性があわない、そんな視聴者はどうすればいいのか。

 私にとって毎週見たくなるドラマは、また別のところにあります。AKIRA主役『ハニー・トラップ』(フジテレビ系 土曜日午後11時)。視聴率は一桁台。でも、かまわない。このドラマ、自分にとっての「上質のサスペンス」だから。

 何が際立つかといえば……まずスピード感。次々に場面が切り替わっていく。転がるようなスリル。ヒリヒリするような緊縛感に満ちている。

 物語の主人公は、先端素材の極秘情報を何者かに盗まれてしまった商社マン・美山悠一(AKIRA)。美山は必死に情報を取り戻そうとするが、次々に現れる罠。情報漏えい問題にメスを入れた、社会派アクションサスペンスです。

 産業スパイの駆け引き、仕掛けられたトラップ。複雑にからまった人間関係のむこうに、意外なドンデン返し。スピード感のある画面をつなぎあわせていくのは、躍動する肉体。AKIRAは走る。本気で走る。飛び越える。すり抜ける。すばやく隠れる。

 役者の見せ所は、セリフや表情だけではありません。鍛え抜いた肉体がいきいきと画面の中を横切ると、視聴者の目は惹きつけられる。

 古いビル、都会の交差点、大学のキャンパス、オフィス街……。ロケが多いことも、このドラマの特徴。実在の空間が産業スパイを扱うドラマのリアリティと緊張感を、ぐんと高める手助けになっている。

 そして、もう一つ「心憎い仕掛け」が。

 最初から、ドラマのある「到達点」のシーンを映し出す仕掛けが、効いています。AKIRAが裸で拷問されているシーン。それが冒頭に、毎回出てくる。たとえ主人公が一つの難局をうまく切り抜けたとしても、結局、最後にこのシーンが待っている。そう念を押すための仕掛け。

 だから、ピリピリとした緊張感が持続するのです。最後の一点に向かって、ドラマも視聴者もひた走っていく。筋だてが少々複雑で混乱したって大丈夫。着地点が見えているから、一緒に走っていける。上手な倒置法です。

 そもそも「サスペンス」とは何か。

 サスペンダーと言えば、ズボン吊りのこと。英語のsuspendedは「宙づり状態」の意味。犯人は誰か、動機は何か、意図は何か……明確なことはわからない。先の見えない“不安定”な状態に宙づりされるひととき。

 緊迫した娯楽性を視聴者に与えてくれる『ハニー・トラップ』は、その意味で、私にとっての「上質なサスペンス・ドラマ」なのです。

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン