中国の温家宝・前首相の娘が北京で経営しているコンサルタント会社が米大手投資銀行モルガン・スタンレーと顧問契約を結んでおり、年間90万ドル(約9000万円)の顧問料を得ていることが分かった。コンサルタント会社の社員はたった2人で、ほとんど経営実体のない会社だけに、「温氏らからの経済情報目当て」との声も出ている。さらに温ファミリーについては昨年10月、27億円もの秘密蓄財の存在が報じられており、「国父」「清廉」との温氏のイメージが崩れ去ろうとしている。
これは米紙ニューヨーク・タイムズが公開資料のほか、同紙が入手した機密文書をもとに報じた。同紙は昨年、温ファミリーの秘密蓄財についてもスクープしている。
温氏の娘は現在40歳で、本名は温如春だが、1980年代に米国の大学に留学して以来、常麗麗(チャン・リーリー)と名乗り、1988年にデラウエア大学大学院でMBA(経営管理学修士)を修得。その後、ニューヨークのマンハッタンの豪華マンション「トランプハウス」に住み、米投資会社リーマンブラザーズやクレジットスイス・ファーストボストンに在籍したこともある。
その後、2005年、32歳のときに帰国して、北京中心部の高層ビル内にコンサルタント会社「フルマーク・コンサルタント」を設立し、社長に就任した。とはいえ、社員は2人だけだった。
しかし、その翌年の2006年からモルガン・スタンレーと顧問契約を締結し、毎月7万5000ドルの報酬を受け取っていた。モルガン・スタンレーは社内に「ブラザー&ドーター(兄弟姉妹)」部門を創設。彼らの仕事は中国共産党・政府幹部の子弟などの情報を収集し、接触するというもので、幹部子弟から中国の重要情報を収集し、ビジネスに生かすことが目的だ。
2006年には中国鉄道省傘下で、線路など鉄道関連施設の建設や補修工事を専門に行なう「中国中鉄」が香港市場で株式上場。それにからんでモルガン・スタンレーは50億ドルもの利益を上げている。また、平安保険も2007年、香港で株式上場した際、同社は10億ドルの利益を得ており、党・政府高官の子弟から情報が漏れたことも考えられる。
この平安保険の株式売買に絡んで、温ファミリーも20億ドルもの株式を取得していたと同紙は報じている。
温ファミリーに関しては、温氏の妻が宝石ビジネスで巨利を得て、長男も香港で投資会社を創設して莫大な収益を獲得するなど、胡散臭いうわさが絶えない。今回の同紙の報道もあり、温首相の清廉なイメージは崩れたと言えよう。