フミヤの何気ない一言に、ヒットメーカーの本質を見た──。11月12日、東京・渋谷のSHIBUYA-AXで、歌手・藤井フミヤ(51)が「復活!カウントダウンライブ青春『50日前夜祭』」を行なった。今年、デビュー30周年を迎えたフミヤは、1曲を除き、すべてチェッカーズ時代の曲を歌った。
チェッカーズの曲といえば、明るくてヤンチャなイメージが強い。だが、案外失恋ソングを数多く歌っている。社会現象を巻き起こした1984年に発売したシングルは、『涙のリクエスト』『哀しくてジェラシー』『星屑のステージ』『ジュリアに傷心』といずれも別れの歌だ。
同時に、チェッカーズは小中学生のファンをたくさん持つアイドルグループとは思えないアダルトな曲も歌っていた。代表的なのは、フミヤ(当時は郁弥)自身が作詞した『NANA』(1986年10月発売)と『ONE NIGHT GIGOLO』(1988年3月発売)だろう。『NANA』はNHKで放送禁止になったほど、過激な歌詞だった。
フミヤ自身、ライブのMCで「『過去脱ぎ捨てて やろうぜ ナナ』というのがダメらしくて、隣の局(NHK)で放送禁止になりまして(会場笑)。勲章ですね」と、当時を振り返った。
『ONE NIGHT GIGOLO』を歌う前には、「最近はエッチな曲ないねえ。『君がいるから、僕も頑張れる』みたいな歌が多いよね」と昨今の音楽事情を分析。たしかに、ここ数年、大人の性を想像させるようなヒット曲は滅多に見られない。インターネットもなく、子供がテレビや歌から大人の世界を勉強していた1980年代という時代が、チェッカーズにこうした曲を歌わせた面もあるかもしれない。
また、バブル時代の明るさがあったからこそ、アダルトな歌詞が世間に受け入れられた側面もあるだろう。事実、バブルが崩壊した1991年、チェッカーズのシングルを振り返ると、『Love ’91』、『ミセスマーメイド』、『ふれてごらん ~please touch your heart~』とラブソングや失恋ソングが中心。翌1992年も、『今夜の涙は最高』、『Blue Moon Stone』、『Present for you』と、爽やかな歌詞のラブソングをリリースしている。
チェッカーズは、時代を掴むことに長けたビッグバンドといえ、デビューから解散まで、すべてのシングルがオリコンベストテン入りするという快挙を成し遂げたのだろう。