フリーキャスター、司会者の草野仁氏は、学生時代に相撲の長崎県国体予選に出場して優勝したり、NHK新人時代に大学レスリング部へ取材にいった時に学生選手に挑戦したところ、未経験であるにも関わらず勝利したりと肉体派なエピソードに事欠かない。草野氏のチャレンジャー魂に比べ対照的に、現代ではネットにこもり、実社会でのコミュニケーションが苦手な若者が増えている。彼らに草野氏からアドバイスをもらった。
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欧米では古代ギリシャ・ローマの昔から、雄弁術や修辞学が学問として研究されてきました。日本では「不言実行」という言葉があるように、コミュニケーションを通じて自分の意見を表明するということがあまりなされてきませんでした。今日の教育の中でも文科省の指導要領には、話し言葉を使って自分の意思を伝えるという項目がありますが、現場の先生はどうやって教えたらいいのか分からないと言います。
若い人に限らず、日本人がコミュニケーションが苦手なのは、そういうこととも関係していると思うのです。しかし悲観することはありません。自分で話し下手だと思い込まないことです。世間で話し上手と言われている人と、そうでない人の差は微々たるものです。
話すのが苦手と思っている人は、その差を埋めようと努力していないだけです。努力とは事前の準備です。友人の結婚パーティーの挨拶でも、忘年会のスピーチでも、部活で述べる一年の抱負でも同じです。何を言いたいのか事前に考え、練習する。それだけで話し方は大きく変わるでしょう。努力すれば時間がかかっても必ず追いつきます。
私は、さまざまな人と会い、いろいろな方とお話しし、自分の人生に深みと広がりをもらったと思っています。口下手だと自分にレッテルを貼っていた学生のころのままだったら、こうはなっていません。若い人たちはネットやスマホの世界に閉じこもらず、積極的にコミュニケーションの輪を広げ、人と人との交わりの面白さ、大切さを実感してほしいと思います。
※SAPIO2013年12月号