大きなビジネスの舞台へと進化した『YouTube』には、様々な欲望が蠢いている。
IT業界で活躍する2人(Aさん=家電やネット業界の内幕に詳しい40代のITライター/Bさん=某IT企業社員。休日もPCやスマホの画面をにらみ続けるネットウォッチャー)が、匿名を条件にその“内幕”を教えてくれた。
A:『YouTube』上には音楽やドラマなど、ありとあらゆるエンタメがあふれている。だけど忘れちゃいけないもう一つの顔は「強力な告発の舞台」になっているということ。
B:誰もが知っているのは「sengoku38」の一件ですよね。2010年、政府が公にしていなかった尖閣諸島中国漁船衝突事件の映像を、当時海上保安官だった一色正春氏が『YouTube』に投稿した。
A:今年9月にも静岡県の高校のバレー部で、教師が生徒に体罰する様子を収めた告発動画がアップされ、すぐさまネットが炎上。その後テレビや新聞も追いかける大ニュースになった。リークがあふれる『YouTube』はニュースの発信源なんだよね。
B:ただし『YouTube』は動画投稿サイトの中で一人勝ち状態で影響力も大きいけど、一方じゃ規制も多いですよね。
A:特に「エロ」の部分では規制が激しい。AVまがいの動画はほとんど排除されているし、乳首もNG。映像データの肌色の割合が高くないかどうかをチェックしているのでは、なんて噂もある。
セクシーなジャンルで見られるのは、せいぜいアイドルのイメージビデオレベル。エロを期待するなら、他のサイトを見たほうがいいね。あと、著作権侵害についても監視の目は厳しい。
B:テレビ局などは業者に頼んで、絶えず番組名などで検索をかけて見つけると削除依頼をしているらしい。投稿するほうも巧妙に検索ワードを避けたり、イタチごっこが続いています。
A:だけどテレビ局やレコード会社も「規制は必ずしも得にならない」と気づき始めている。10代、20代の若い世代はいまや『YouTube』で、新曲や番組の情報を得ている。
「きゃりーぱみゅぱみゅ」が世界的な人気者になったのも、各国の人々がネットを介して気軽にPVを見られたからだし。有力なプロモーション手段だからこそ、最近はテレビ局やレコード会社の公式チャンネルも増えている。
B:『YouTube』では再生回数に応じてバナー広告の広告料が入ってくるので、投稿動画が大人気になると、思わぬ巨額収入が得られることがある。
キラーコンテンツはやはり「動物」と「子供」。イギリス発のとても可愛い赤ちゃんの動画は、家が買えるくらいもうかったそうです。日本でも、猫が走って缶ビールの空きパッケージに入るCMがありましたが、あの猫はもともと『YouTube』で人気だった猫。飼い主が得た利益は計り知れません。
A:まさに幸運の招き猫だね(笑い)。「『YouTube』成金」なんて言葉がそのうち生まれるかもしれない。
※週刊ポスト2013年11月29日号