漫画『釣りバカ日誌』シリーズの原作者である、やまさき十三さん(72才)が手掛ける初監督映画『あさひるばん』が、11月29日に公開される。
自身の出身地・宮崎県の全面協力を得て、ほとんどのシーンを宮崎で撮影したこともあり、監督は今年、宮崎県の観光大使に任命された。これも72才にして初めての体験だ。
「宮崎に住んでいる人にとっては、平凡な風景かもしれませんが、俳優やカメラマンが切り取ることによって、見慣れた景色も別の風景に見えることがあると思うんです。それに、宮崎の良さというのは、地元の人は気づいていないかもしれないけど、野菜でも水でも、安心して口にできるところ。
それって、実は簡単に作れるものではなくて、長い歴史の間に皆の努力で、いわずもがなで作られた、大変な遺産と思うんですよね」(やまさき監督、以下「」内同)
初監督をして、改めて感じたのは、映画は大勢の力でできているということだ。
「正直、これほどまでに多くのかたにお世話になるのか、と改めて実感しました。ロケでお邪魔した宮崎市の綾町のおかあさんたちには、夜中に炊き出ししてもらったし、病院の撮影では、宮崎弁で“がね”というかきあげみたいな天ぷらを作ってもらいました。
日南市にある南郷スタジアムで野球の決勝戦シーンを撮った時には、母校の大宮高校のブラスバンド部員をはじめとして1300名の人々がエキストラとして参加してくれたりして、本当に考えられないような協力を得たんです」
人生後半を過ぎたころには、もう自分の人生なんて、終わりだと思うことがよくあるだろう。しかし、監督のように70代に入ってから夢が叶うこともあると思うと、にじむように希望が湧いてくるから不思議だ。最後に、さらなる夢を聞いてみた。
「それは当然、聞かれると思っていましたが、今はとても次のことなんて考える余裕はないんです。映画というのは、すぐにシリーズ化されるほど甘いものじゃないことはわかっていますしね。ともかく今回の作品が成功し、多くのかたに喜んでもらえて、結果的に宮崎が知られたり、撮影でお世話になったかたがたに少しでも恩返しができたらいいなと思うだけなんです」
※女性セブン2013年12月12日号