「脱原発」発言で再び存在感を増している小泉純一郎元首相(71才)。政界を引退してもなお小泉元首相が、注目されるのはなぜだろうか。
2005年の郵政民営化に真っ向から反対して自民党を脱党、現在は脱原発を主張する衆院議員の亀井静香さんは、当時を振り返りながら、理由をこう推測する。
「純ちゃんは感覚の人。こうと決めたらそこに突き進む。その時の迫力と行動力はすごいものがある。それがかつての郵政民営化であり、今は脱原発発言なのでしょう。当時、私は自民党の60人の派閥の長だったけど、彼の迫力に負けて、ほとんどがひれ伏しましたから(笑い)」
国民に聞いてみたい──そう記者会見して衆議院の解散を発表した小泉元首相の行動は当時、無謀と思われた。負けるに違いないと多くの人が思った。しかし、それは時と共に熱狂へと変わり、大勝利へとつながっていく。そして実際に郵政民営化を実現させた実績があるからこそ、今回も、やってくれるかもしれないと国民に支持されるのだろう。
著書の『日本郵政』(日本経済新聞社)で、郵政民営化は、郵政利権を牛耳っていた田中角栄ら旧田中派に対する小泉元首相の怨念の産物にすぎないと喝破したジャーナリストの町田徹さんは、次のように語る。
「あまり知られていませんが、NTT民営化で役職員の給料が高騰した前例があったので、反対一色と思われていた官僚の中に、郵政民営化をのぞむ声があったんです。小泉さんは、そうした声を聞き、民営化は不可能だという通説が間違いで、勝算があると踏んでました。政治家としての嗅覚は抜群です。その嗅覚は、今回も発輝されている。
震災直後は電力不足が起きて社会が大混乱するかもしれないという懸念がありましたが、2年8か月たって、化石燃料や再生可能エネルギーに置き換えて停電を避けられることが確認できたからです。要はおカネの問題だ、と判明しました。小泉さんは、郵政民営化の時と同じように、従来の通説が間違いで、脱原発は実現できると踏んだのです。だからこそ、このような発言をしたのではないでしょうか。
ただ、これも郵政民営化の時と同じでしょうが、今までよりよいものにできるのか、そのためにどういうふうにやればいいのか、といった具体論については驚くほどノーアイディアだと思いますよ。小泉さんは政治家はアバウトであるべきだ、という信念の持ち主ですから」
※女性セブン2013年12月12日号