消費増税による税収増を当て込んで、各省庁の「分捕り合戦」が始まった。復興予算流用問題を週刊ポストでスクープし、一連の流用問題をまとめた『国家のシロアリ』(12月刊行予定)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞した気鋭のジャーナリスト・福場ひとみ氏が、消費税にたかるシロアリを斬る。
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消費者庁は増税に伴う便乗値上げを監視する「物価モニター体制」を強化するとして関連費用6700万円を要求。一方で経産省は小売業者などが増税分の価格転嫁を拒まないよう監視する「転嫁対策調査官(転嫁Gメン)」を474人採用。内閣府の外局にあたる公正取引委員会も同様の役割を担う人員を10月に約100人採用した。
行政のスリム化の流れの中で今年は増員要求が認められるチャンスとばかりに金融庁は検査・監督部門を中心に42人の増員を求め、原子力規制庁も人数を明示せずに原発の安全審査迅速化のための人員増を求めた。
概算要求額が最も大きかったのは厚生労働省で30兆5620億円。
だからといって社会保障が充実すると思うのは浅はかだ。雇用分野では、従業員を転職させる「労働移動支援助成金」を前年の2億円から301億円に増やした。なんと150倍アップである。
ブラック企業で働く若者の電話相談窓口の開設には18億円を要求。少子化対策では、「待機児童解消のために保育所を整備し定員を7万人増やす」として4937億円を要求した。
一方で、年金、介護、医療では国民負担増と給付カットを矢継ぎ早に決めている。保育所経営への株式会社の参入要件の緩和など、規制改革のスピードも上がらない。
しかも保育所整備については厚労省の概算要求の説明資料だけ見ると「7万人増やすために4937億円を使う」と読めるが、細目を見ていくと既存施設の運営費がほとんどを占める。定員増のための予算は全体の10分の1以下の「288億円程度」(雇用均等・児童家庭局保育課)だという。
社会的関心の高いテーマにかこつけて予算を分捕る霞が関の常套手段である。
※SAPIO2013年12月号