もはやペットが家族なのは当然の時代。2011年のペット関連市場は1兆4033億円(矢野経済研究所調べ)。少し前には一緒に旅行したくても、ホテルや遊べる場所があまりなかったが、今ではペットとの行動範囲や暮らしは劇的に改善している。
犬や猫と暮らす場合、自分の生活はもとより、ペットが快適に暮らせる設備やサービスを求めて物件を探す人も少なくない。
全国で2000戸以上のペット共生型マンションをプロデュースしたアドホック広報・辻村宏さんはこう語る。
「フローリングはすべりやすく、ワンちゃんの股関節脱臼や椎間板ヘルニア、ストレスによる無駄吠えの原因にもなるため、すべりにくく清掃しやすいペット対応床材を使用。最近は、出張トリミングやしつけ教室、獣医師によるメール医療相談など、より快適に暮らすためのソフトサービスへの需要が高まっています」
中村洋子さん(仮名)は、こんな体験を持つ。
「猫ちゃんと暮らし始めましたが、爪で壁をやたらとひっかき、落ち着きがありません。思い切って猫マンションに引っ越すと、くぐり戸付きのドアや、キャットウオークもあり、自由に動けて嬉しいのか、落ち着きがでてきました」
何をするにもペット優先の生活は、他人からは不自由に見えるが、本人にとってはこれ以上の幸福はない。そんな彼女が現在もっとも恐れるのは、高齢に伴う猫の病気と、いずれくるお別れの日だ。
「10年以上、生きる子も多いといいますが、あと数年後には…。考えるだけで涙が出ます。もしもの時はどうしようかと、猫友たちと話しています」(中村さん)
確かにペットの寿命は飛躍的に伸びている。犬の場合、1990年に8才6か月だった犬の平均寿命は、2012年に13才3か月に伸びた。1990年代は、5才前後といわれていた猫の現在の平均寿命は13才8か月で、実に倍以上も長生きだ(アニコム損害保険調べ)。
長寿なのはよいことだが、どんなに健康に気をつけても、病気にかかることもある。中でも急増しているのはがんだ。
「昨年の4~12才までの犬の死因の1位は、がんでした。猫では腎不全に次いでがんが2位。ともに加齢とともに罹患率は高まります」
と言うのは、ペット専門の損害保険会社・アニコム損害保険の井上舞さん。 都内のマンションで暮らす佐藤春江さん(仮名)の愛犬チワワ(7才)は、左前脚が腫れ、医者に見せると悪性リンパ腫と診断された。大学病院で犬の放射線治療(35万円)と、抗がん剤治療など(約15万)を行い、現在までに50万円ほど支払った。
「現在のところ良好でひと安心。負担は大きいですが、家族を失うことを考えたら、惜しくはありません」(佐藤さん)
※女性セブン2013年12月5日号