2013年のプロ野球のベストナインが、11月21日に発表された。セ・リーグは優勝した巨人から3人、60本でシーズン最多本塁打記録を作ったウラディミール・バレンティン(ヤクルト)も選ばれるなど順当な選出となった。パ・リーグは日本一の楽天から4人。打点王の浅村栄斗(西武)など7人が初選出となるフレッシュな顔ぶれが並んだ。
そのなかで、シーズンで24勝0敗1セーブの大記録を樹立した田中将大は、満票で選ばれた。パの満票は2003年の城島と井口(ともにダイエー)以来。投手としては1958年の稲尾(西鉄)、1989年の阿波野(近鉄)に次いで3人目の快挙である。
そもそも、ベストナインは取材歴5年以上の新聞記者による投票で選出されるもの。今年の田中将大であれば、満票は当然のように思える。しかし、「仮に楽天がセ・リーグの球団だったとすれば、田中ですら満票にはならなかった可能性がある」と指摘する声もある。スポーツ紙記者が話す。
「毎年、ベストナイン投票で1票しか入らない選手が、何人か存在しますよね。なぜ、その選手に投票するのか理解できないファンも多いと思います。たとえば、今年のバレンティンは普通に考えれば、満票で選出されてもおかしくない。でも、有効投票266に対して、258しか入っていない。8人の記者はバレンティンに投票していないわけです。
その背景には、球団の親会社が影響しているのかもしれません。セ・リーグは読売、中日と新聞社を親会社に持つ球団が存在する。また、デイリースポーツは阪神の専門紙といってもいいスポーツ紙です。今年のセ・リーグ外野手部門を見ると、規定打席にすら達していない高橋由伸(巨人)、桧山進次郎(阪神)に1票ずつ、平田良介(中)には4票入っている。
もちろん皆良い選手たちですが、今年の成績で“ベストナイン”という栄誉を与えるのは首を捻らざるを得ません。引退した桧山には功績を称える意味だとは思いますが……。無記名投票ですから、誰がどの選手に投票したかはわからないですけどね」
阿部慎之助(巨人)は264票。満票に足りなかった2票は、谷繁元信(中日)に投票されている。谷繁は球界を代表する捕手だが、契約更改で年俸が6000万円減となったように個人成績はふるわず、チームも4位と低迷した。
「パ・リーグは直接の系列紙を持つ球団がないこともあり、田中将大が満票選出となったのでしょう。でも、系列紙のないパ・リーグでも、1票しか入ってない選手は数人いますよね。それは、1年中選手たちに張り付いている各球団の番記者たちが投票していると考えられます。ずっと観ていると、贔屓目になる面もあるし、情が沸くことも否めません。だからこそ、田中将大の満票というのは本当に価値のあることなんです」(同前)
毎年起こる、謎の死票。野球マニアにとっては、それもまたベストナイン投票の楽しみではある。