アメリカ最大手の精子バンク、カリフォルニア・クライオバンクの本社は名門大学UCLAの近くにオフィスを構えている。ニューヨークはコロンビア大学、北カリフォルニアはスタンフォード大学、そしてボストンオフィスはMITのすぐ近くにある。理由は簡単。
「ドナー(精子提供者)を探すのに、有名大学の学生が最も理想的だから」と話すのは、クライオバンクのコミュニケーションディレクター、スコット・ブラウン氏だ。
集められた「優秀なドナー候補者たち」はピラミッド式に7段階に分かれたスクリーニングで次々にふるい落とされ、登録に至るまで3か月から半年もかかる。在学中の大学、身長などの基本的な条件以外に、精子の数と活発度の調査、本人の病歴はもちろん、家族の病歴も調べられ、時には論文まで課せられる。
謝礼は高額なのかと思いきや、1回の精子提供に対して100ドル。1か月に10回ドネーションすれば1000ドルの計算になる。ドナー応募の動機を聞くと、「お金も一つの要因だが、人の役に立ちたいという精神が何より大きい。そして、精子提供を受けた人たちが子供を授かることで、双方にウィンウィン(win win)な状況が生まれるのを心から喜べるのが我々のドナーだ」とブラウン氏。
クライオバンクは「子供に恵まれない人たちに家族構築の機会を提供する」という目的のもと、1977年に設立された。最初はクライアントの多くが異性のカップルだったが、途中から精子を希望する人たちのバックグラウンドが変わった。今では未婚の女性、もしくはレズビアンのカップルがクライアントの7割を占める。
※週刊ポスト2013年12月13日号