視聴率も絶好調のNHKの朝ドラ『ごちそうさん』では、姑による嫁いじりのシーンも少なくない。日本のドラマ界で、嫁姑のバトルを描いてきた脚本家といえば、『おしん』『渡る世間は鬼ばかり』を手掛けた橋田壽賀子さんだ。
そんな橋田さんは、平成の世でも“嫁いびりドラマ”が受けているのは、「昔と違って嫁と姑の関係が逆転したから」と分析する。
「昔は各家庭に“家風”があったから、姑の立場が強くて威張ることができました。今は嫁のほうが強くて、“姑が何よ”という時代でしょう。特に上の世代は、さんざん姑に仕えたのに、いざ自分が姑になったら、立場が弱くなってた。それで、『あれだけ嫁をいじめられたら気分いいだろうな』『私の言いたいことを言ってくれた』とドラマで溜飲を下げているのでしょう」(以下、「」内、橋田さん)
橋田さんが描いた壮絶な嫁いびりには、実体験も反映されている。41才で結婚し、静岡県沼津市にある夫の実家に行くと、驚きの連続だったという。
「小姑さんからいきなり、『姑が大豆は黒い豆と言ったら、白でも黒だと納得しろ』と言われました。そのほかにも『布団は西日に当てるものじゃない』とか、洗濯物の干し方が違うとか、こと細かくひどく注意されましたよ」
ある日、台所で姑さんに「手伝うことはありますか」と聞くと、「ゆっくりしていなよ」と言われた。余計なことをするとまた何か言われると思っておとなしくしていると、「東京の嫁は働かにゃあね。何もしにゃあだね」と陰口を叩かれた。
ならばと料理に励むと、「あんたの料理は水くさい」「こんな薄味はダメ」と強烈なダメ出し。「私たち夫婦はもう年なので、血圧が心配で薄味にしてるんです」と説明すると、姑は驚いたように「壽賀子さんは口答えするのね」とつぶやいた。
「私の意図を少しでも説明すると、何でも“口答え”にされて、すごくショックでした。『あんな嫁で、亭主にちゃんとメシ食わせているのかしら』とも言われましたね。嫁と姑、小姑の関係は永久に平行線だと実感しましたよ。さんざん痛い目を見たので、嫁姑モノはいくらでも書けます(笑い)。ドラマを見ているかたたちに『あなたたちはまだ幸せだ、もっと大変な世界があるのよ』と伝えたくて書いているんですね」
時代は変わっても、今後もドラマのなかの嫁姑バトルは続くだろうと橋田さんは予言する。
「顔を合わせてニコニコしていても、嫁と姑は腹のなかでお互いに気に入らないと思ってますよ。嫁と姑は永遠のライバルであり、敵同士だから仲よくできません(笑い)。この世に嫁と姑がいる限り、嫁いびりドラマはなくなりませんよ」
※女性セブン2013年12月12日号