北朝鮮の最高指導者、金正恩第一書記の叔父で、ナンバー2といわれる張成沢・国防委員会副委員長について、韓国の国家情報院は3日、張氏の側近2人が公開処刑され失脚したもようだと明らかにした。実はこのところ、公の場に姿を現す回数が減っていることから、金氏に疎んじられて、閑職に回されているのではないかとの観測が出ていた。
張成沢氏は故金正日総書記の妹の夫で、金総書記の腹心のナンバー2として影響力を行使してきた。2011年12月に金総書記が死去すると、後継者の金正恩氏を補佐し、引き続きナンバー2の地位を維持し、さまざまな助言を行なってきた。
昨年1年間で、152回報道された正恩氏の活動に、張氏が同行した回数はその7割の100回以上に達しており、他の幹部を引き離していた。
ところが、今年の場合、正恩氏の活動報道は8月中旬までで100件を超えたが、幹部の同行回数としては、最も多かったのが崔竜海・朝鮮人民軍総政治局長の73回。張氏が同行したのはわずかに27件と、前年の約4分の1にとどまっている。張氏の身に異変が起きていたのは明らかだ。
これについて、韓国の北朝鮮ウォッチャーは「北朝鮮国内では政治経験が少なく、まだ若い金第一書記よりも、政治経験が豊富で、海外の事情に通じており、経済改革の必要性を強く主張してきた張氏の方が、指導者として頼りになるとの声が強く、正恩氏が張氏に取って代わられるのではないと警戒しているためではないか」と指摘する。
最近では張氏が新聞やテレビのニュースに登場することはほとんどなく、党行政部長職を解任されたとの情報も出ていた。また、張氏は北朝鮮軍の兵站部門を担当し、北朝鮮の兵器や装備を主に中東地域に輸出する担当の呉克烈・国防委員会副委員長と行動をともにすることが多いことから、外貨獲得部門の最高責任者を任されており獲得した外貨をめぐってトラブルに発展したとの見方もある。
いずれにしても、張氏は行政能力が高く、政治経験も豊富で、毛並みも良いため、却って金氏に忠誠心を疑われたのは間違いない。現在、その消息は不明だという。