ヤフージャパンが「TOEIC900点でボーナス100万円」という制度を導入して話題になるなど、ビジネスパーソンにとって英語力は無視できないスキルのひとつとなっている。世界約150か国で実施されているTOEICのスコアは、査定や転職時の資格として重用されている“ものさし”のひとつだ。
日本国内でTOEICテストを実施している、国際ビジネスコミュニケーション協会(以下、IIBC)が行なった「ビジネスシーンでの英語に関する学習実態・意識調査」(1都3県の20~50代の英語学習に意欲的なビジネスパーソン男女1000名に実施)によると、「英語が査定項目に取り入れられている」が27.6%。そのうち「あなたの勤務先査定に取り入れられている英語指針はなんですか?」という質問に、86.6%が「TOEICテスト」と回答している。
実はこのTOEICテストには、一般的に「TOEIC」と言った際に思い浮かべるテスト以外に、2種類のテストがあることは、あまり知られていないのではないだろうか。一つは主に中・高生など初級者を対象としたリスニング(試験実施時間25分・50問・90点満点)、リーディング(試験実施時間35分・50問・90点満点)、合計60分で100問に答えるマークシート方式の「TOEIC Bridge」。
そしてもうひとつが、従来のマークシート回答では測れなかった「話す・書く」といったアウトプットに焦点を絞った「TOEIC SWテスト」(以下、SWテスト)だ。このSWテストの「SW」とは、スピーキングとライティングの頭文字で、テストの構成としては、スピーキングの時間が約20分間で11問、200点満点。ライティングの試験時間は約60分間で8問、200点満点となっている。
前出の調査では、「英語能力を高めるたに、学習しているスキルはどれですか」の質問に、「聞く」86.3%、「読む」62.2%に対して、「話す」60.9%、「書く(メールを打つことを含む)」39.2%で、インプット型の学習の方が高い値の結果となった。
しかし実際のビジネスシーンで使う英語は、直接会って話す商談のほか、電話やスカイプなどでの会議といった会話による対応。また欧米との時差が大きい日本ではメールによる伝達など、こちらが能動的に動く際に「話す・書く」は欠くことのできないスキルでもある。
IIBCに聞いたところ、現在SWテストを実施している国は約25。「TOEICテスト」の約150か国に比べると少なく感じるが、今後実施国が増えて行く可能性があるという。また国内企業の採用や人事担当者の中には、スキルを測る基準に合致する資格のひとつとして、SWテストも同様に基準として検討するケースも出てきた。そのため同協会では、サイト内に「TOEICテストとTOEIC SWテストのスコア比較表」を掲載し、基準をわかりやすくするなどの対応を行なっている。
こうした流れを踏まえ、TOEICテストの現状やSWテストの可能性について、大手英会話スクールで「TOEIC対策」を担当している講師・M氏に、話を聞いた。
「査定や転職のためにTOEICスコアを上げる勉強をする過程で、もちろん多くの英語力を身につけることは可能です。ただ生徒さんの中には、ある程度満足の行くスコアが取れても、実際に“使う”シーンでしっくりしない悩みを持たれるケースも。そのためTOEIC対策のコースを終えられる方に、スピーキングやライティングのコースを勧めることは多いですね」(M氏)
その一方で偏差値偏重教育を受けてきた人の中には、英語力を高めるよりも、問題を見ずにマークシートの選択肢の中から、より正解率の高いものを選び出す――「いわゆる“テスト対策テクニック”に、力を入れてしまうタイプも一部いる」と、M氏は苦笑する。
「ビジネスシーンの実務において、『話す・書く』力は、これからもっとニーズが高まると思います。バランスの良い英語力、本当に“使える”英語を身につけたことを示すものさしとして、『TOEIC SWテスト』は、今後注目の資格になっていくのではないでしょうか」(M氏)