「社会福祉費が増大している」
「このままだと財政破綻する」
安倍政権は「税と社会保障の一体改革」を唱え、増税にまっしぐらだ。増税ほど政治家・官僚が嘘をつく政策はない。そもそも消費税が導入されたときの名分が「高齢化福祉対策のため」だったのだから、今さら全額社会保障に使うと言わなければならないこと自体、これまで嘘をついてきたことの告白に他ならない。
財政が苦しいと言いながら経団連の求めるままに法人税を減税し、国土強靱化に名を借りた公共事業に巨額を投じる計画なのだから、誰のための増税かは明白である。
『SAPIO』(2013年12月号)では、<消費増税は日本を滅ぼす「シロアリノミクス」だ>と題して、安倍政権の“嘘”を暴く大特集を組んでいる。その中からジャーナリスト・武冨薫氏のレポートを紹介しよう。
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安倍首相は10月1日の増税決断会見で、こう強調した。
「足元の日本経済は3本の矢の効果で回復の兆しを見せています。2期連続で3%以上のプラス成長、有効求人倍率も0.95まで回復しました。生産も消費も、そしてようやく設備投資も持ち直してきています。15年間にわたるデフレマインドによってもたらされた日本経済の縮みマインドは変化しつつある」
“景気は回復しているから、増税しても大丈夫”と国民に思い込ませようとしたのだ。
現実はとてもそんな状況ではない。経済指標のデータがそれを示している。
総務省は10月25日に全国消費者物価指数(9月分)が、「4か月連続で上昇」と発表した。が、内容をよくみると、石油や小麦などの輸入価格上昇の影響が大きい。
つまり「円安による輸入インフレ」だ。消費意欲が拡大し、モノやサービスが足りなくなって物価が上昇するインフレとは違い、生産拡大・給与増をもたらさない。国民にとっては苦しいだけのインフレである。
一般的に諸外国で物価の変動を表わす指標として用いるのは、輸入価格に左右されやすいエネルギーと食品を除いた物価指数(コアコアCPI)である。
その直近の上昇率は±0.0%で、2008年12月以降、4年8か月間マイナスが続いてきた。つまり今もデフレを脱したとは言えない。
政府がデフレ脱却の根拠として発表する指数はエネルギー価格を含む「コアCPI」であり、これは外国では普通、使わない。
※SAPIO2013年12月号