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中村勘三郎さんの妻 毎晩握って寝た夫の手の思い出を告白

 東京・浅草──この地は、昨年12月5日に57才という若さで亡くなった中村勘三郎さんにとって『平成中村座』を立ち上げた思い出の地でもある。11月27日、その浅草にある西徳寺で勘三郎さんの一周忌法要と納骨式が営まれた。この日は、勘三郎さんと妻・好江さん(54才)にとって、33回目の結婚記念日でもあった。

 150人の参列者に見守られる中、好江さんは縄文土器をモチーフにした銀杏の柄の骨壺を大事そうに抱えていた。最愛の夫との最後の別れを惜しむかのように、寂しそうな表情を浮かべていた。

 その好江さんは、勘三郎さんの一周忌となる12月5日、勘三郎さんが食道がんと告知されてからの壮絶なまでの闘病生活と、それを支え続けた家族の絆を綴った手記『中村勘三郎 最期の131日 哲明さんと生きて』(集英社刊)を出版した。最愛の夫の死から1年。彼女がどんな思いで夫・勘三郎さんと過ごしてきたのか、そして夫婦で病気と闘った日々について、改めて明かしてくれた。

「寝ているとき以外は、ずっと思い出しています。今も生前と変わらず、朝起きると哲さん(勘三郎さんの本名・波野哲明)の骨壺にキスして、『今日はいい天気だね』なんて話しかけるんです。この間も、ベッドに哲さんが寝ていたんです。ギュッと抱きしめたけど、徐々に体が消えていくんです。夢だったんですけど…。やっぱりまだ近くにいるような気がして…」

 夫婦の闘いが始まったのは2012年6月1日。人間ドックを受けた勘三郎さんは食道がんの告知を受ける。

 7月27日、12時間にも及ぶ手術は無事成功。翌日にはICU内を歩き回るほど経過は順調だった。しかし、8月2日、事態は一変する。勘三郎さんは誤嚥性肺炎を起こし、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)を発症。なかなか容体はよくならず、人工肺を使わなければ体内に酸素が送れないほど、重篤な状態に陥ってしまう。だが、肺移植に踏み切る前に、勘三郎さんは脳出血を起こして、脳死状態となり、その治療は叶わなかった…。

 最期のときが近づくなか、好江さんの胸中には、勘三郎さんのすべてを残したいという思いが溢れ出てきたという。

「寝るときに毎晩、手を握って寝ていたので、哲さんの手が欲しくなってしまい、先生に『手を切って!』と真剣にお願いしました。さすがにそれは無理だったので、石膏で手の型を作りました。けんかをして、背を向けて寝ていたときでさえ、主人は『ほらっ、ほらっ』と私の手を取ろうとするんです。

 彼の手は、ふわっと柔らかくて温かくて、優しい手なんです。ギュッと握らなくても触れているだけで安心しました。その温もりは、今でも近くで感じることができるんです」

※女性セブン2013年12月19日号

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