消費増税による税収増を当て込んで、各省庁の「分捕り合戦」が始まった。復興予算流用問題を週刊ポストでスクープし、一連の流用問題をまとめた『国家のシロアリ』(12月刊行予定)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞した気鋭のジャーナリスト・福場ひとみ氏が、消費税にたかるシロアリを斬る。
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来年4月には消費税率が8%に引き上げられ、初年度で約4兆円の税収増(国税分)が見込まれる。それを当て込み、シロアリ官僚たちが動き出した。
特に国土交通省は公共事業費で5兆1986億円を要求し、前年度から17%増。本来、公共事業などの裁量的経費は原則1割削減するルールがあるが、安倍政権は抜け穴を用意した。
削減ルールが適用されない3兆6000億円の「新しい日本のための優先課題推進枠」を設定。国交省はその特別枠で約1兆2000億円を要求したのだ。
だが、特別枠の中身は何が「新しい」のか全くわからない。「国際競争力の強化」という名目で要求されたのは、整備新幹線のための116億円。整備新幹線については、特別枠以外でも前年度実績通りの706億円が計上された。北海道・北陸・九州の3ルートの完成前倒しを求める自民党議員の利益誘導に乗って予算を膨らませただけである。
公共事業が欲しい自民党議員の思惑に沿った「特別枠」予算は他にもある。4802億円(うち「特別枠」2153億円)の「代替性確保ネットワーク整備等の防災・震災対策」がそうだ。既存の道路が災害で遮断された際に、代替となるもう一本の道を作っておくという名目である。
国交省の出先機関である近畿地方整備局によれば、紀伊半島を一周する「近畿自動車道紀勢線」の田辺~すさみ間(和歌山県)の建設がこの予算に含まれる。和歌山と言えば「国土強靱化」の生みの親である二階俊博・総務会長代行の地元であり、紀伊半島一周道路の完成は二階氏が繰り返し公言してきた悲願だ。
「政権交代で失った利権を取り戻す」という意味あいの予算も多い。民主党政権が反対していた群馬県の八ッ場ダムは、本体工事費を含む99億円が計上された。本体工事に予算がつけば2009年度以来5年ぶりのこと。
「これまで周辺工事を進めてきて、早期完成に向け予算を要求したということ」(水管理・国土保全局治水課)と担当課は前のめりの姿勢を隠さない。
民主党政権が自民政権時代の約3分の1まで削っていた農水省の土地改良予算(農業農村整備事業)は、前年度比22%増の3197億円を計上(うち「特別枠」は549億円)。
農水省の概算要求で目立つのが「攻めの農業」「競争力強化」といった文言だ。農地の大区画化を推進するという新項目には502億円を計上。農業の競争力強化は喫緊の課題だが、農地集約には農地売買の規制緩和などが不可欠だ。
そうしたお金のかからない規制改革は後回しにして、「先に予算を取ろう」という姿勢である。
※SAPIO2013年12月号