日本の社交ダンス人口は世界一(立川テンダンスクラブ)
「東京と大阪周辺だけで2500件近くのダンスパーティーのお知らせが、うちの雑誌には毎月載っています」
そう語るのは、創刊25周年を迎えた社交ダンス雑誌『ダンスビュウ』の森田康夫編集長。ダンス愛好家同士が企画し、わずか数百円で参加できる社交ダンスのパーティーが、1年を通じて毎月何千件も開かれ、しかもその数が年々増え続けているというのだ。
いま、再び社交ダンスがブームになっている。以前は映画と、芸能人によるバラエティ番組が大きな話題となった「社交ダンス」が、ここにきて「ボールルームダンス」や「ダンススポーツ」と呼ばれるようになり、再び活況を呈している。バラエティ番組でも芸能人が必死に練習を積む様子を眼にした方も多いだろう。人気テレビドラマの題材になり、ダンス少年漫画『ボールルームへようこそ』がベストセラーになったことも、ブームを後押ししている。
以前の社交ダンス・ブームとの違いは、楽しむ層が広がったことだ。増加するシニア世代が定年後の趣味や新しい出会いの場を求めブームを牽引する一方で、幼稚園児から小、中、高校生、大学生から30~40代と、熱心に練習に励む年齢層の幅が広がった。ダンスサークルも,30代から70代までが一緒に踊る団体もあれば、45歳までと上限を設けた「ヤングサークル」も盛んだ。
出会いの場として根強い人気があるのに加え、音感と身体を鍛えるスポーツとしても捉えられるようになった。始めたお陰で姿勢がよくなったという声を多数耳にするのは、その効果の現れだ。
ダンスに嵌った人も様々。上手くなるには教室に通って、個人レッスンを受けるのが一番と、お目当ての先生に注ぎ込んだ費用は「マンションを1軒分」という話も。一方で、練習熱心なサークルに1回数百円で通いながら、競技会に出られるほど上達する人もいる。
きっかけは趣味として始める人だけではない。娘の婚約を機に練習を始め、披露宴で愛娘と「ラスト・ダンス」を踊るのが、シニア男性の憧れを刺激し人気だという。
実はあまり知られていないが、日本の社交ダンス人口は世界一といわれる。教室で、サークルで、熱心に踊るシニア世代が支えてきたダンス人気。そこに子どもと若年層が加わり、ブームの渦がさらに広がりつつある。
撮影・文■稲葉なおと
※週刊ポスト2013年12月13日号