来年4月1日からSUICAを利用できる駅が増えるとJR東日本が発表してから、同時に明かされた「大都市近郊区間」の変更が鉄道ファンを中心に大きな反響を呼んでいる。
100営業キロ以上に適用される途中下車が、長野県の松本駅は新宿から200営業キロ以上も離れているのに“近郊”になるとできなくなると嘆く人もいるが、「大回り乗車」できるエリアが広がったと歓迎する声が大きい。
「大回り乗車とは、都市近郊区間内の特例を利用して電車から降りずに目的地までわざと遠回りして行くことを言います。たとえば、横浜から東京へ向うには東海道線や京浜東北線を利用するのが普通だと思いますが、八王子へ行き、八高線を利用して埼玉県の熊谷や大宮などを回ってから東京に着く乗り方をする。こういった乗り方は今まで東京圏・大阪圏・福岡圏・新潟圏だけでしたが、4月1日から仙台圏が加わるので喜ばれています」
鉄道ファンが歓迎する理由を解説してくれたのは『踏切天国』など鉄道関連の著作があるライターの小川裕夫さんだ。
「新設された仙台近郊区間をみると宮城、福島、山形と大規模な大回り乗車ができます。新潟近郊区間も拡大されたので、柏崎駅を利用してこれまでより大きな大回り乗車ができます。大回り乗車を趣味とする人にとっては、名古屋圏で大回りできるようになるのが悲願なのですが、残念ながら名古屋には近郊区間の設定がありません。JR東海の路線が愛知県内では環状線になっていないので難しいのかもしれないですね」
鉄道ファンには写真撮影をする撮り鉄、車輌にこだわる車輌鉄、発車メロディなどの録音や走る様子を録画する録り鉄など様々な分野にわかれているが、列車に乗ることを楽しむ乗り鉄には旅行好きの延長として楽しむライトユーザーも多いのが特徴だという。
「“乗り鉄”には女性も多く、『一日だけ遊びに行けそうだから大回りしてきます』という主婦もいますよ。たまの休みに隣駅まで130円の乗車券を買って、エキナカで食事やショッピングし、車窓の景色を楽しみながら改札から出ずに小旅行するんです」(前出・小川さん)
一区間だけの乗車券を手に乗車駅から遠い路線の列車に乗っていると、巡回する車掌さんから不審がられることもあるが、「大回りしています」と申告すれば、たいていは理解してもらえるという。
「車掌さんや駅員さんも慣れていることが多いので『君たちも好きだねえ』といった感じでニヤリとさることもあります(笑)。ただし、乗車経路が重複しないなど都市近郊区間内の特例をよく確かめてから実行してください。どういうルートで乗っているのか説明できるようにしておくと安心ですね」(前出・小川さん)
東北地方には美味しい駅弁も多い。大回り乗車の新たなルートに加わった仙台圏で、東北を満喫する電車の旅も楽しそうだ。