中国の「防空識別圏」を飛ぶ国際線は本当に大丈夫なのか──。発端は11月23日だった。国土交通省関係者がいう。
「突然、中国の航空当局から東シナ海の尖閣諸島上空に防空識別圏を設定したというNOTAMが入ったんです。NOTAMとは、世界各国の政府が公開する航空情報のことで、航空施設の変更や航路上の危険情報などの連絡が国交省を通じて各航空会社に入ります。その時は“この空域を飛ぶ際には、事前に当局にフライトプラン(飛行計画)を提出しなさい”という内容でした」
「防空識別圏」とは、各国の領土から12海里(約22キロメートル)の「領空」への侵犯を防ぐために、領空より外側に定めている空域だ。事前申告なく防空識別圏に侵入した他国の航空機を識別すると、自国の戦闘機が緊急発進(スクランブル)し、警告することができる。さらに中国は、その空域に許可なく進行した航空機に対し、監視や警告だけでなく、撃墜を含んだ防御的緊急措置を講じるとしたのである。日本政府の外交関係者がいう。
「中国は領有を主張する尖閣諸島上空を“準領空”扱いするのが目的なのでしょうが、国際的なルールを無視した信じられない暴挙です。通常、防空識別圏は周辺国と相談して決められる。今回、中国が設定した空域は日本の領空や防空識別圏とも重なっているので、日本に対して何の事前通達もないのは非常識。それに不審機への攻撃が許されるのは領空のみで、防空識別圏に入っただけで撃墜を匂わせるのは権利を逸脱した脅迫です」
後に中国政府は防空識別圏での戦闘行為については否定したが、中国国内メディアは依然好戦的なままだ。急進的な軍人らがテレビや新聞上で“不審機が見つかればミサイル部隊が警戒態勢に入る”と息巻いているのである。
※週刊ポスト2013年12月20・27日号