シニア層の憧れ、豪華客船クルーズに異変が起きている。100兆円ともいわれる日本のシニア市場を見越し、海外の豪華客船が続々参入している。活況を極める船旅ビジネスを写真家・稲葉なおと氏が取材した。
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ランドマークタワーに赤レンガ倉庫、観覧車。ライトアップされた横浜の夕景が次第に遠ざかる。午後5時。8階デッキにはジャズの生演奏が華やかに鳴り響き、カクテルグラスを手にした乗客が旅の始まりに胸を高鳴らせる。
日本を代表する豪華客船「ぱしふぃっく びいなす」は小笠原諸島父島に向けて出港した。全長183メートル。旅客数620人。12階建ての大型ホテルに泊まりながら海の上を旅するような、贅沢な旅の始まりだ。
いま、新たな旅の楽しみとしてクルーズが脚光を浴びている。今年からイタリアやアメリカのクルーズ会社が巨大豪華客船をひっさげ日本市場に本格参入してきた。これまで日本船が独占していた日本一周クルーズにも進出し、2013年は国内外の豪華客船が競い合う「クルーズ元年」といわれ大いに賑わった。
今回乗船した日本の豪華客船「ぱしふぃっく びいなす」も、2015年の世界一周クルーズが発売2週間で完売し、キャンセル待ちになるほど人気だという。今回の小笠原クルーズ(5泊6日)も定員400人分が完売した。
撮影・文■稲葉なおと
※週刊ポスト2013年12月20・27日号