テキサス・レンジャースから移籍した今シーズン、上原浩治(38)はボストンで単身生活を送った。テキサス時代も含めれば、ホテル暮らしは2年半になった。
「シーズン中は球場とホテルを往復するだけの毎日ですから、プライベートの時間なんてないんです。ほとんど球場で生活をしているようなものです。だから、ボストンの街だってほとんど見ていない。ほとんどどころか、一度も街を観光したことはないですね」(上原。以下「」内同)
レッドソックスの本拠地球場であるフェンウェイ・パークで試合がある時は、球場内で朝、昼、晩の食事を摂る。ナイトゲーム後、ホテルの部屋に帰るのは深夜1時。そこから風呂に浸かり、毎日の日課である30分ほどの電気治療を終えると、時計の針はすでに2時を回っている。ベッドに入り「眠くなったら寝る」時間は、おおよそ3時ぐらいだ。
「入浴剤を入れてまずはお風呂にゆっくりと浸かって、それから治療ですね。電気治療は日本にいた時代、巨人の4年目ぐらいからずっとやってきたものですが、毎日やるようになったのはアメリカに来てからです。それが終わるとやっとホッとできる時間なので、そこでブログを更新したりしますね」
自身が持つブログの更新は「結構、気分転換になる」という。上原にとって、もっとも気持ちが安らぐ瞬間は入浴剤入りの湯船に浸かった時だ。
「やっぱりお風呂に浸からないと。とにかく浸かりたい。ただのお湯より何か入れたほうがいいじゃないですか」
遠征での移動中に読む本、レトルトの味噌汁、そして乾きモノなどのおつまみとともに、必ずホテルに常備しておく入浴剤は種類が豊富だ。
「それが小さな楽しみなんです」
上原はそういって、目尻を下げる。
取材・文■佐々木亨(スポーツライター)
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2013年12月20・27日号