中国が突然設定した「防空識別圏」に対し、日本政府は全日空(ANA)と日本航空(JAL)に中国へフライトプランを提出しないよう要請した。日本が毅然とした態度を見せた反面、同盟国のアメリカは違う態度をとった。
12月3日、来日したバイデン副大統領は安倍首相と会談後の共同記者会見で、中国側の一方的な防空識別圏設定に対し、「深く懸念している。中国の指導者と会う時、懸念を具体的に提起したい」と発言した。
アメリカはしっかりと日本と歩調を合わせる──と思われたが、実際にはそうではない。アメリカの民間の航空会社がフライトプランを提出することをやめさせなかったのである。米国国防関係者がいう。
「防空識別圏に設定された空域は、米軍が軍事演習を行なう地域でもある。アメリカは軍用機の対応では日本と一致しており、中国政府に対して演習の事前通達をすることはない。
だが、民間機は別だ。不測の事態は絶対に避けなければいけない。国民の安全を考え、“中国政府の出した方針に従うべき”というスタンスをとった」
中国外交部によれば、「3日の時点で19か国、3地域の航空会社55社がフライトプランを提出している」という。この数字が事実であれば、日本を除く、大部分の航空会社が中国の通達に従ったことになる。
※週刊ポスト2013年12月20・27日号