J1最終節でサンフレッチェ広島に逆転優勝をゆるし、あと一歩のところで栄冠を逃した横浜F・マリノス。惜しくも2位に終わったが終盤まで首位を走り続け、Jリーグを大いに盛り上げた。今季のマリノス躍進の立役者となったのは、なんといっても、6月で35歳を迎えた中村俊輔だろう。中村は34試合中33試合とほぼ全試合に出場し10ゴールをあげるなどして、MVPを獲得。年齢を感じさせない活躍を見せた。
中村といえば、2010年のW杯直前にレギュラーを外され、本大会でも出番はわずか26分。大会後に日本代表からの引退を表明し、代表は中村から本田圭祐のチームへ変わっていった。その中村が、なぜこれほど活躍できたのだろうか。サッカーライターはこう分析する。
「Jリーグのチームは1年成績が悪いと、監督だけでなく選手も大幅に変える傾向がある。しかしここ数年、マリノスはレギュラー陣にそこまで大きな変化はない。変わるにしても徐々に入れ替わるだけ。中村はマリノスに戻ってきてから4年目で随分と慣れてきたし、周囲とのコンビネーションも取りやすくなった。それに、代表引退したことも大きいでしょう。シーズン中に招集されて、遠征続きになると、どうしても疲労が溜まりますからね。
中村も35歳のベテランですが、同い年の中澤佑二、37歳のマルキーニョス、40歳のドゥトラと大ベテランがいるのも大きい。自分の年齢を必要以上に意識しなくて済むし、チーム全体のことを考えつつも、1人で背負うプレッシャーからは軽減された。これがプレーに若さを生んだのではないでしょうか」
そうはいっても、来季のシーズン中、36歳になる中村。いつまで質の高いプレーを続けられるのか、不安も残る。
「キング・カズこと三浦知良は35歳のシーズンから点が取れなくなりました。17点、11点と2ケタ得点をマークしていたのに、2002年のヴィッセル神戸時代に3点と激減。しかも、うち2点はPKでした。カズは2月生まれのため、学年でいえば36歳になる年です。
ゴンこと中山雅史も、36歳を迎えるシーズンでケガがあったとはいえ、3点しか取れず。それまでの7年で6度も2ケタ得点をしていたのに、それ以降は引退するまで一度も2ケタ得点を取れなくなった。ゴール数だけでは測り切れない部分ももちろんありますが、一瞬のキレやスピードが衰えるのが36歳という年齢なのでしょう。
カズ自身も、のちに『36、37歳で体の変化を感じた』と漏らしています。アスリートの食生活や体のケアというスポーツ学は年々進歩しているので、来季の中村がどこまでやれるか、いろんな意味で興味深いですね」(同前)
中村は「36歳の分岐点」を乗り切ることができるか。