東京都は2020五輪開催のために4000億円の基金を積み立てており、競技施設の整備に死角はない。しかし、意外なことに、招致関係者の間で最も不安視されているのが「空港」なのだ。
国土交通省航空局が9月に公表した成田と羽田の需要シミュレーションによると、両空港の需要は2022年までに現在の発着枠を上回り、限界を超える。
「航空局の予測には東京五輪の影響が考慮されていなかった。五輪開催が決定したことで空港需要はさらに高まり、発着枠がいよいよ足りなくなると予想されます。都としては五輪までに羽田に5本目の滑走路を建設することや、首都圏の第3空港として横田飛行場の軍民共用化を求めているが、まだ目途は立っていないのが実情です」(東京都都市整備局交通企画課)
都市インフラの面からみても、ニューヨークは都心から北部にラガーディア空港、東部のJFK空港、西部はニューアーク空港とバランスよく配置されているのに対し、東京は西部に空港がなく、第3空港の整備が課題とされている。
そのため、石原慎太郎・前都知事は横田飛行場の返還を公約に掲げ、都庁の知事本局に「横田基地共用化推進担当」の部署を設置して米国のシーファー元駐日大使やキャンベル元国務次官補と交渉していたが、10年かけても進展しなかった。だが、実は、その陰で具体的に米国と交渉し、実現一歩手前までこぎつけていたのが小泉純一郎元首相なのである。
小泉氏は2003年のブッシュ大統領(当時)との首脳会談で、米軍横田飛行場の「軍民共用化」を提案、大統領も前向きに回答をしたとされる。その後、在日米軍基地再編交渉の中で、小泉政権は横田を航空自衛隊と共用することと、米空軍が握っている首都上空の航空管制権の返還を求め、そのうち自衛隊との共用は実現。昨年3月、「航空自衛隊横田基地」として正式に共用を開始している。
折しも、東京都の猪瀬直樹都知事が、巨額資金提供疑惑で進退窮まっており、近い将来の都知事選挙も取り沙汰されている。仮に、本当に仮にであるが、小泉氏が出馬すれば圧勝は確実だ。
小泉氏はこうした実績と米国との太いパイプを持つだけに、都知事なれば、五輪開催の最大の懸案で、石原氏が10年かけてもできなかった横田の「第3空港化」をやり遂げる可能性は十分ある。
※週刊ポスト2013年12月20・27日号